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第4回本屋大賞受賞!『一瞬の風になれ』(2ページ目)

書店員が一番売りたい本を投票で選ぶ「本屋大賞」。4月5日に発表になったばかりの第4回受賞作品は、佐藤多佳子『一瞬の風になれ』だ。好きにならずにはいられない、その内容とは?

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

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全三巻を思わず一気読み

一瞬の風になれ 第二部 --ヨウイ--
第二部のサブタイトルは「ヨウイ」。高校二年生に進級した新二。新たなチームメイトと大会目指して充実した日々を送り、淡い恋も芽生え……。そこへ思わぬアクシデントが起こる!
新二たちがやっているのは短距離走。しかも100メートルがメインだ。勝負は10秒ちょっとでついてしまう。まさに一瞬の積み重ねの世界。だがその一瞬の描写が、豊かで臨場感あふれている。走る気持ちよさが伝わってくるのだ。

また、連をはじめとして、個性的なチームメイトとのやりとりも楽しい。新二と連を陸上部に引っ張り込んだ根岸、人格者の先輩・守屋、筋肉オタクの後輩・桃内、放任のようでいざというときには頼りになる顧問の三輪。それぞれのキャラが生き生きとしている。会話もフランクでテンポがいい。それから、ある女の子に対して静かに盛り上がっていく恋心も読みどころだ。

まったくの素人だったのに、どんどん走るスピードを上げていく新二。何であれ、上達すれば楽しくなっていく。新二の場合はサッカーに挫折した後だから、なおさらうれしい。ところが、新二の心を大きく揺るがすアクシデントが起こる。スポーツものではありがちな悲劇ではあるけれど、これを中盤の第二部にもってきて、しかもことさらに煽らないところが品がいい。
一瞬の風になれ 第三部 --ドン--
いよいよ最終巻の第三部。サブタイトルは「ドン」。三年生になった新二は、県有数のベストタイムを持つ選手に成長した。果たして彼は連に追いつくことができるのか?
友情あり、恋あり、成長あり。『一瞬の風になれ』は王道の青春小説だ。「王様のブランチ」や「本の雑誌」で2006年度の年間ナンバーワンに選ばれたり、直木賞候補になったり、吉川英治文学新人賞を受賞したり、かなり話題になっていた。題材といい、キャラクターといい、物語といい、多くの人に好かれそうな内容で、本屋大賞をとるのも納得。

全三巻という大作だが、長さはまったく感じない。まっすぐな道を走りぬけるように、気持ちよく読める作品だ。

<DATA>
タイトル:『一瞬の風になれ』
出版社:講談社
著者:佐藤多佳子
価格:第一部、第二部各1,470円(税込) 第三部1,575円(税込)

【関連リンク】
「全国書店員が選んだ いちばん!売りたい本 本屋大賞」:本屋大賞公式サイト。選考過程や発表会のレポートなどが読める。

「佐藤多佳子の連絡板」:佐藤多佳子公式サイト。最新情報や日記などが読める。

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