妄想の中ではハッピー、でも現実は?

お目出たき人
片想い男のぐるぐる思考を描いた爆笑小説といえば、妄想まみれの青春を古風な文体で描きブレイクした森見登美彦。『お目出たき人』は森見ファンにもオススメ
相手を低く見る一方で羨んだり、妙に悲観的かと思えばちょっとした言動を都合のいいように解釈したり。「自分」の思考は常にぐるぐるしている。月子さんに失恋した後、好きになった鶴という女の子に対しても同じ。

鶴は近所に住んでいたが、声をかけることもできないまま、少し離れた町に引っ越してしまった。彼女の不在によって、妄想だけが膨らみ続ける。

自分が鶴と夫婦になりたいと思った時に先ず心配したのは近処の人に冷笑されることであった。

と、一足飛びに結婚後のことを心配し、父親を通して求婚してもらうのが決まるとすっかり婚約がまとまったような気分になってしまう。鶴の学校の前で待ち伏せし、結婚後に話す予定の言葉も考える。あっさり縁談を断られても、鶴が人妻になるまではあきらめないことを(勝手に!)誓う。なぜなら「自分」は女に飢えているし、いじけないうちに春が来てくれないと困る。だから、

自分は自我を発展させる為にも鶴を要求するものである。

なんと偉そうな男だろうか。しかし、そんな身勝手な思い込みが受け入れられるはずもない。決定的な事実が判明したときの「自分」の行動が傑作。泣きながら「目出度し」という題の詩を詠むのだ。

全編にわたって、主人公のあまりのおバカさんぶりに笑いがとまらないのだが、なぜか切ない。恋する者は多かれ少なかれ、彼のように希望と絶望の間を揺れ動き、普段の自分からは考えられないような滑稽なことをするから。「こんなやつ、友達だったらイヤだなあ」と思いながら、共感もしてしまうのだ。

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タイトル:『お目出たき人』
出版社:新潮社
著者:武者小路実篤
価格:380円(税込)

【関連リンク】
「実篤記念館ウェブ」…調布市にある武者小路実篤記念館の公式ウェブサイト。「仲良きことは美しき哉」の色紙も売っている。



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