ボーヴが『ぼくのともだち』を出すよりも10年以上前、日本ではこんな小説が出版されていた。

日本一偉そうな片想い男!?武者小路実篤『お目出たき人』

お目出たき人
ロクに口を利いたこともない女性に対する熱烈で一方的な片恋と、その当然すぎる破局までを、文豪・武者小路実篤が、底ぬけの率直さで描く。片想い男のぐるぐる思考に爆笑!
茄子や南瓜の絵に「仲良きことは美しき哉」という格言が添えられた色紙。武者小路実篤といえばそんなイメージがある。名前だけは知っているけど、作品を読んだことはないという人も多いのでは? 今回オススメするのは代表作の『友情』ではなく、『お目出たき人』。

本書は語り手の「自分」が華やかな着物を着たふたりの若い女性を目にするシーンから始まる。女たちを心の中で値踏みしながら、「自分」はこんなことを考えている。

自分は女に餓えている。誠に女に餓えている。残念ながら美しい女、若い女に餓えている。七年前に自分の十九歳の時に恋していた月子さんが故郷に帰った以後、若い美しい女と話した事すらない自分は、女に餓えている。

「女に餓(う)えている」という独白。しかも何度もリピートしてしつこい。しかも「自分」は、何か思っても次の瞬間には否定してしまう。例えば「自分」は楽しそうに話している若い夫婦を見て、羨ましく思った、でもそのすぐ後に羨ましく思うよりも呪った、ところがまたすぐに彼らを祝しようと思う、しかし同じ行でやっぱり呪いたくなるのだ。「祝うのか呪うのか、どっちだよ!」とツッコミを入れたくなってしょうがない。


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