現代の都会に生きる男女の倦怠を描かせれば絶品の芥川賞作家の最新短編集。温泉に泊まる5組の男女が抱かえる、それぞれの事情、それぞれの・・・く 『初恋温泉』 ・吉田修一(著) ・価格:1365円(税込) |
■現代小説の旗手が描く「温泉五景」。絵になる大人の夫婦が抱えている事情とは?
『パーク・ライフ』で第127回芥川賞を受賞した著者。『パレード』『春、バーニーズで』、『東京湾景』などなど、高い文学性とスタイリッシュな現代性をあわせもった書き手として高い評価を得ている。そんな著者の最新短編集。
作品の共通項は、タイトル通り「温泉」。
熱海の高級旅館を訪れた夫婦。一見、垢抜けた感じのオトナのカップルだが、この夫婦には切迫した事情が。温泉旅行の前日、妻・彩子が突然、離婚を切り出したのだ。居酒屋チェーン経営を軌道に乗せ、「高め」の女性である彩子を幸せにしたつもりでいた夫・光彦は・・・(表題作)。かつての同級生である和美と不倫の関係になった祐二。互いに妻・夫を裏切りあっているという悪事の甘美さを味わうはずだった関係はいつしか変質していく。そんな折、和美に京都旅行に誘われて・・・(『ためらいの湯』)外資系生命保険会社に転進し、高い報酬を得るようになった男。妻にも十分裕福な暮らしをさせているつもりでいたが、妻が突然、反乱する。激情した男は、妻を殴ってしまい、混乱のまま、二人で来るはずだった温泉に一人で出かける。そこで、一人旅の女に出合う(『風来温泉』)など5編。
うーむ、温泉・・・こうやって読むと、温泉って・・・