■ようやく、ようやく・・・の受賞。意地と信念が滲む強きコメントにも納得!
さて、「のどの小骨が取れたような気持ち」と受賞の感想を語った彼女以上に、待たされすぎるほど待たされて(本人はともかく、ファンにとっては)の受賞となったのが、直木賞の東野圭吾。
『秘密』が第120回候補になって以来、『白夜行』、『片思い』、『手紙』、『幻夜』と次々とノミネート、そのたびごとに本命視されてきたが、ついに、『容疑者Xの献身』で栄冠を射止めた。候補回数歴代トップとあって、「面白いゲームやったな。勝ててよかった」と言う受賞の弁には一種の貫禄(有体に言うならふてぶてしさ)すら滲む。
受賞作は、天才物理学者、湯川が謎解きに挑む『探偵ガリレオ』シリーズ3作目のミステリーであると同時に、湯川に対峙する数学者・石神の無償の愛が話題を集めた。
『このミス』などでも堂々の一位、ミステリーとしてのクオリティーの高さは言うまでもないが、直木賞に推理を主体とする作品が同賞を受賞するのは珍しいとのこと(ふーん、そうだったんだ・・・)。だが、「トリックより強烈におもしろい話を書きたかったので、賞の趣旨と違っているとは思いません」というご本人の言葉を待つまでもなく、彼の作品が、狭義の意味での「ミステリー」の枠組みを超えた重厚な人間ドラマであることは、多くの人が既に認めるところだ。
もしも、だ。『白夜行』が「人間が書かれていない」という理由で、選に漏れたのだとすると、そりゃー、東野さんがいうように、「選考委員の悪口を言って、やけ酒を飲む」よね・・・。
それにしても、伊坂幸太郎、恩田陸、荻原浩、姫野カオルコと、今回の直木賞は、本当に誰がとっても文句なし、という感じ。個人的には、姫野カオルコが本命だったんですが(東野さんに関しては、この際、無冠の帝王、というのもカッコいいかもと思っていました)。
新人でノミネートされた『夜市』も佳作!近いうちにきっと紹介したいと思う。
今回の両賞は、芥川・直木所とも、「純文学」「ミステリー」などといったジャンルの枠組み軽々と超えていくだけの実力を有した書き手が選ばれたと言えるだろう。
数ある文学賞のなかでもっとも注目度が高い両賞の情報チェックは、「芥川賞・直木賞受賞作を読む」で
■絲山秋子の公式ページ「絲山秋子website」では、群馬県内に構えた仕事部屋周辺での彼女の日常を知ることができます。
■熱狂的なファンも多い東野圭吾。非公式ファンサイト「東野圭吾を読もう」にも、愛が感じられます。
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