『容疑者Xの献身』
「男の至上愛」を描いた、この作品で、ついに受賞
去る1月17日、第134回芥川賞、直木賞が決定した。芥川賞には、絲山秋子『沖で待つ』、直木賞は東野圭吾『容疑者Xの献身』。ここ数年、若い受賞者が話題を集めてきたが、今年は両賞とも何度も候補になったことのある書き手の受賞となった。

■純文学・エンタメのボーダーを越えて・・・同時代性の高い物語を描く絲山秋子が芥川賞に!
 
絲山秋子は、デビュー作『イッツ・オンリー・トーク』が第129回芥川賞候補作になって以来、第130回(『海の仙人』)、第131回(『勤労感謝の日』)と立て続けに候補になった。さらに、直木賞にも『逃亡くそたわけ』でノミネートされている。『袋小路の男』で川端康成賞を受賞するなど、既に「本好き」の間では高い評価を得ている書き手。
 
 受賞作は、住宅機器メーカー営業職の女性を主人公に、同期の男性との関係を通して企業で生きる人々の日々を綴った作品。著者自身も、大手住宅機器メーカーで営業職として勤務した経験があり、男女雇用機会均等法のもとで社会人生活を送った、特に女性にとっては、きわめて同時代的な物語だ。
 受賞の弁においても「社会に通じる物語が書きたい」と語っていた絲山氏は、ニートを扱った作品でも話題を集めている。同時代性より普遍性が重視されがちな純文学の匂いが強い芥川賞に彼女が選ばれたということは、彼女の実力が「純文学」「エンタメ」の垣根を軽々超えていくものであることを示したともいえる。
 個人的には、とてもとても好きな作家、もっともっと多くの人に読まれてほしい作家なので、今回の受賞は、かなり嬉しい。この人の作品、ハズレないっすよ!