イサカの最新作は、パワーあふれる青春小説。ちょっと奇妙な若者たちが、砂漠に雪を降らせる!? 『砂漠』 ・伊坂幸太郎(著) ・価格:1600円(税込) この本を買いたい! |
■大学生活というオアシスにも出没する「砂漠」に挑む若者たちを描いた、サプライズてんこもりの青春小説
今もっとも注目を集める書き手の一人である著者の最新青春小説。
仙台の国立大学法学部に進学した僕、北村は、4月、学部のコンパで、微妙に軽薄な男・鳥井、偶然にも鳥井と小・中学校で同級生だったという無口だが陽だまりの中にいるような女性・南、その美貌で男性陣の注目を一身に集めながら無表情を貫く東堂、そして、コンパでいきなり「世界平和のために麻雀で“平和”ピンフと作り続けている」「その気になったら砂漠に雪を降らせることもできる」と奇妙な演説をぶった西嶋と出会う。
僕は、「楽しい大学生活のための仲間づくり」には無関心だったが、「同じクラスに東西南北を名字に持つ人間が集まっているのは、何か意味がある」という、これまた奇妙な理屈で西嶋に麻雀に誘われ、鳥井(飼っている文鳥に、自身の名にもちなみ、鳥の絵柄が描かれた麻雀牌イーソーという名をつけている)の部屋で麻雀をしたのをきっかけに、彼らと親しくなる。
南が実は超能力をもっていることに愕然としたり、「人間とは、自分と関係のない不幸な出来事に、くよくよすることだ」という自分が信じる哲学を、彼なりのやり方で実践している西嶋に違和感とともに妙な感銘をうけたり、超「ムリめ」な女性である東堂が、「見苦しいけれど、見苦しくない」と西嶋に魅かれていると知って驚いたり、鳥井と西嶋が合コンのために服を買いに行くのに付き合わされて、その時に知り合った鳩麦さんと恋人になったり・・・
大学一年生の春には、鳥井がボーリング場でホストたちに煽られ、超ピンチに陥り、そのピンチを東堂と西嶋が救うという場面に遭遇する。大学2年生の夏には、このホストたちとの絡みから、ある事件に巻き込まれ、鳥井が左腕を失くすという悲劇が起こる。事件のショックで心を閉ざしてしまった鳥井。重苦しさを抱かえたまま、何もできない僕だが、西嶋は、突拍子もない「作戦」に出る。そして・・・
社会という「砂漠」に囲まれた「オアシス」である大学生活。そこにも出没する、「砂漠」に「雪を降らそう」とそれぞれのやり方で奮戦するするちょっと奇妙な若者たちの日々を描く。
いや、個人的には、文句なく!楽しませていただいた。サプライズ満載、小技満載、どのサプライズも、どの小技も、さすが、伊坂幸太郎!だが・・・