■虚栄心、俗物根性、コンプレックス・・・負の情動を見つめて作品を紡ぐ東野作品の真骨頂がここにも
本作に収められた作品のいずれも、その「笑いの素」は、虚栄心、ミーハー根性、コンプレックスの裏返しの自負心など、社会と関わっていきていかざるを得ない者誰しもが多かれ少なかれ持っているネガティブな心の動きである。著者は、常に、この情動をみつめている。そして、この情動が引き起こす悲劇的で宿命的な事件を描き出し、時としては、この常道が引き起こす「笑うしかない」事態を描くのだ。
多様な芸風を持ち味にしている著者だが、どの作品も、人間の心理というものに徹底的に接近して、そこから作品を紡ぎ出すという姿勢は、一貫している。
そう、著者は、おそらく、自分の心の内にある負の情動を認めない「えらそうな人」「すました人」が徹底的に嫌いなのだ。この反骨の姿勢も、彼の作品を貫く背骨であろう。
それにしても、渾身の大作をいくつも書いて、燃え尽きることなく、しかも、こういう悪ノリ気味のものを、きちんと、活きのいい「小説」という形で書ける、作家・東野圭吾は、凄い。本作に登場する「終ってる」作家とは対極にいることには疑問の余地がない。
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