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V・I・ウォーショースキー 「わたしのボスは、わたし」(2ページ目)

「女性が書く女性が主人公の探偵小説」の先駆者の一人、サラ・パレツキーが生み出した、V・I・ウォーショースキー。サラが、彼女を通じて、自立する女性たちに伝えたかったことは?

執筆者:梅村 千恵

◆◆自分で自分をコントロールする。その孤独も、引き受ける。だって、自分で選んだ生き方だから

 ヴィクは、元・弁護士。エリート弁護士と結婚しますが、離婚。一人で探偵事務所を運営しています。シリーズ1作目では、30代前半ですが、9作目『バースディー・ブルー』で、40代に突入。

シリーズの中で、何人かの男性と恋をしますが、いまだ独身。毎回、不本意にも(とばかりは思えないのですが)危ない事件に巻き込まれてしまう彼女は、 巨大な敵に、空手と、度胸と、洞察力で立ち向かい、活路を開いていきます
そんなヴィクが、恐怖や孤独に打ち負かされそうになる時、自分で自分にこう言い聞かせるのです。


「わたしのボスは、わたし」――そして、そうしたくて、この仕事を、この生き方を、選んだのだと。

 読者の方の中には、彼女や私と同様、組織を離れフリーな立場で仕事をしておられる方もおられると思います。
そういった人間にとって、この言葉は、とてもリアル!
さぼろうと思えば、いつでもさぼれる。でも、そうしてしまった結果を引き受けるのは、誰でもなく自分。そのことは、時として孤独だし、シンドイ。でも、ヴィクの言う通り、それを、選んだのも自分、なわけですから。

組織において働いていらっしゃるほうに方にとっても、ポジションが上がれば上がるほど、精神的な意味での「ボス」(組織図上の「ボス」ではなく)は少なくなってくるでしょう。

もし、あなたが、そのような現実に直面したら、そっと、心の中でつぶいてみませんか?

「わたしのボスは、わたし」と。

◆◆時には甘やかすのも、いい「ボス」の条件

 最後にひとつ、どうしてもお伝えしたかったこと。
もしかすると、読者の中にはヴィクは、完全無欠の女性のように感じた人もいらっしゃるでしょうが、
 とんでもない!

 何しろ、彼女、家事がまるでダメ。「誰が見るわけでもない」と、食事をした皿は、流しに置きっぱなし、服は、椅子の背にかけっぱなし(いや~、個人的には、ものすごく、共感!です)。

 仕事においても、時として、短気で、強引。自分で決めたルール(例えば、「行動する前にまず一考」)を次の瞬間に破ることなど、朝飯前です。

 ヴィクの「ボス」は、誰よりそのことをよく知っていて、時としてルール違反に目をつぶるのです。また、時には、ヴィクを思い切り甘やかせてやります。問題は山積にも関わらず、男のベッドで眼を覚ましたり、自分が一番綺麗に見える洋服選びに時間をさいたり・・・。そう、ヴィクは、ちゃんと、自分に甘い女性なのです。


 でも、だからこそ、彼女は、自分にとって、いいボスでいられるのではないでしょうか。

 だって、いいボスは、部下に完璧を求めますか?必要以上に、部下を追い詰めますか?

「頑張らなくっちゃ」という思いが自分の中にいっぱいになって、ちょっと息苦しくなっている方、ぜひ、ヴィクに逢ってみませんか?このアネゴ、きっと、いい友達になってくれると思います。
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