■医者でない者が、医療を考える。「問題提議」という使命を負った主人公
私の周囲でも、この作品に着目している友人・知人は少なくない。医療現場とはあまり関わりのない私たちは、まず、この作品をこう評する。
「重いよね」「暗いよね」「キツイよね」「イタイよね」
そして、その後、ほぼ全員がこう言う。
「考えさせられるよね」――
で、私たちの会話は、例えば、こんな風に進んでいく。
自分がガンになったら告知してほしいか?大切な人がそうなったらどうなのか?
言葉に尽くせないほど辛いと聞いている抗ガン治療は、どの段階まで望むのか?
医療というサービスを金で買う、という考え方についてはどう思うか?
自身の延命治療は望むか?大切な人の場合は?
もし、出産前に自分の子どもに障害があることがわかってしまったら、どういう選択をするのか?
もちろん、私達の議論ともいえぬ議論が、日本の医療を変えるとは思えない。
だが、「医者ではない」我々が、医療の現場に対して、何らかの意志をもち、それを主張することは、けっして社会的に無意味ではないはずだ。
私たちは、その生の終末に、ほぼ100%の確認で医師や医療機関が関わるであろう社会に生きている。医療の問題を考えることは、自身の「生の始末」を考えることでもある。
斎藤英二郎は、ヒーローでない。彼の行動は、答えではない。
彼は、「問題提議」という任務を背負い、顔を歪ませ、絶叫し、うつむき、歯をむく。
コミックというより幅広い層に受け入れられやすいメディアにおいて、彼が投げかけた「問題」を多くの人が受け止めたとすれば・・・。未来は、少しずつ、少しずつ、変わる。変わる、と信じたい。
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