『戦争倫理学』
加藤尚武 ちくま新書 700円
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■目の前で外国工作員によって友人が拉致されたても、「実力行使は否」と言い切れるか?
アメリカのイラク攻撃が山場を越えた。テレビカメラを前に「イラク国民を解放した」と語るブッシュ大統領の姿に、苦々しいもの、釈然としないものを感じる人は、私を含め少なからずいらっしゃるであろう。
この戦争は、世界の自由と人々の生命を守るための「正義の戦争」なのか?そもそも、「正義の戦争」などというものが存在するのだろうか?
戦争を望むか、望まないか、いや、嫌いか好きかと問えば、多くの人が「望まない」「嫌いだ」と答えるであろう。もちろん、私もそうである。
だが、本書の前書きの「目の前で外国の工作員に友人が拉致されようとしているとき、あなたは実力で救いだしてはならないと考えますか?」という問いかけにガツンときた。
「どんな状況であろうとも、すべての武力行使に反対だ」と叫ぶのは、一見、かっこいい。また、「戦争をするのは、国家の権利だ、略奪も虐殺もすべての暴力行為が容認された状態が戦争で、戦時の人権侵害を問題にするのは無意味だ」という主張も、こう声高に語る一部の有名人が少ないとはいえない人々に受け入れられていることが示すように、何がしかの吸引力はある。
どちらにしても、感情的で曖昧なまま、「戦争」という問題を捉えつづける限り、「厭戦」は、状況が変われば容易く「好戦」に変わるのだ。9・11テロ以降の世論の流れがそれを証明してはいまいか。
本書はその中で、「踏みとどまる」ための論拠を示すべく書かれた一冊である。
ちなみに、私が本書を買い求めた書店のポップには、「ブッシュが絶対読まない本」と書かれていた。さて、その内容とは?