■戦争を描きつつあの「終戦」以後の現代日本のあり方を問い、エンターテインメントの新たな地平を拓く
著者は、浅倉及び米潜水艦と、それに対抗し、その意志に殉ずる決意を固めた者たちとの壮絶な戦いを、戦争遂行に青春を捧げ尽くした者たちの濃密な人間ドラマを交えつつ、綿密にして重量感あふれる筆致で描きながら、読む者を一気に終章まで引っ張っていく。
そして、その終章にあるのは、現代日本のあり方に関わる重い、重い問いかけだ。
終章。あの終戦から半世紀以上。かつての若者は、死を前にして、自問する。
自分たちが命を賭けて選び取った「終戦」が、その後の日本にとって最良のものであったのか。日本人は、あの浅倉が予言したとおり、精神的自立を明渡してしまったのではないか。
彼は、いや、著者は、読む者に問う。民族の精神的自立とは何か、その誇りとは何か。それは、一人一人の命より軽いのか、重いのか――。
個性的で魅力的な登場人物たちの人間ドラマ、密度の高い戦争アクション。一級のエンターテインメントとして読者を一刻も飽きさせず、しかも、今こそこの国に住む者がそれぞれの立場で真剣に問い直すべきテーマを表現する――著者の力量には改めて瞠目させられる。
エンターテインメントの新たな可能性の感じさせてくれる堂々の力作である。
★あえて、アラ、捜します!
「秘密兵器」の正体をめぐっての前半は、若干、ありがちだな、と。全部読み通すと、その正体がどうのっていうのを超えた作品だとわかるんだけどね。
この本を買いたい!
この著者「ハズレ作」ないと思います。著書リストなど、彼のことをもっと知りたいなら「福井晴敏オフィシャルページ」へ。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。