『海辺のカフカ』(上・下)
村上春樹 新潮社 各1600円
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■四国・高松。この地で二つの旅が出会う。なぜ?そして、その先には?
15歳の誕生日。少年は、母と姉がはるか昔に見捨ててしまった家を捨て、二度とは戻らない旅に出る。行き先は、四国。彼が旅立ってまもなく、彼が後にした場所からそう遠くないところで、一人の老人が不思議な事件に巻き込まれていた。戦時中の不可思議な事故によって文字を読み書きする能力を失い、代わりにネコ語がわかるようになったナカタ老人は、一匹のネコの行方を追ううちに、ネコ殺しの犯人に出会う。凄惨な殺戮、そして、理不尽きわまりない要求。すべてが終わった時、彼も何かに引き寄せられるように、人生の大半をそこから一歩も出ず暮らした東京・中野区を出て、西へ向かう。
一方、少年は、四国・高松で、現実からぽっかり遊離したかのような古ぼけた図書館に辿りついていた。ナカタさんの旅と少年の旅は、どうやって結びあうのか。なぜ、二つの旅は結びあわなくてはならないのか。結び合った、その先に何があるのか――。
『ねじまき鳥クロニクル』から、本作へ。地下鉄サリン事件の被害者たちをインタビューした『アンダーグラウンド』、阪神大震災をモチーフにした作品が収められている短編集『神の子どもたちはみな踊る』・・・。著者の作品には、暴力的な力で、大切な「何か」を奪われ、深い喪失を抱かえこむ人々が多く登場する。
さて、本作はどうだろう?