■著者が特に日本に向けて発信したかったメッセージとは?
本書は、1998年から2001年の間に著者が「エコノミスト」「ウォール・ストリート・ジャーナル」などに執筆したものやインタビューなどをまとめたものであるが、「日本先行発売」のもっとも大きな理由は、著者の日本における支持の高さであろう。しかし、そのようなセールス的な側面とは別に、彼本人の意図があったように思えてならない。
本書内では、日本の劇的な構造変化を望む機運にも意外な反撃が加えられている。その主張も、きわめて興味深いが、何より、「日本の読者へ」と銘打った前文の記述が印象的だ。
著者は、言う。
「日本では誰もが経済の話をする。だが、日本にとって最大の問題は社会である」――。
個別の指摘もさることながら、この言葉こそが、日本の企業人すべてに向けての本書最大のメッセージなのではないだろうか。
ともあれ、社会の変化は、非可逆的に進んでいる。もはや止められない。来るべくして来る「ネクスト・ソサエティー」の一員として、いかに「よく働き、よく生きる」のか――。読む者それぞれの模索に指標を与えてくれる一冊である。
★あえて、アラ、捜します!
章ごとの記述、内容は、平明でありながら示唆に富んでいる。しかし、全体の構成として、もう少し読ませる工夫はないものか。無駄な繰り返しも多い。雑誌掲載の論文やインタビューを集めたものだから、しかたがないのだろうが。
この本を買いたい!
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