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たまにはじっくり。文芸書<第1回> 『カシコギ』

韓国で社会現象的ヒット! 厳しい経済情勢と苦闘しながらひたすらに父性愛を貫く男の生き様に、なんだかだといって、やっぱり、泣けます。それにしても、なぜここまで売れたの?

執筆者:梅村 千恵


『カシコギ』

趙 昌仁/著
金 淳鍋/訳
サンマーク出版 1600円

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■母性愛ならぬ父性愛。それも壮絶! 強烈!

サッカーW杯の共同開催で興味が高まっている韓国。日本と同様、出版が活況を呈しているとは言いがたい同国で、2000年の春から2001年にかけて160万部を売り上げ、大ベストセラー。

このちょっと奇妙なタイトルは、トゲウオ科に属す魚の名前。本文や帯で説明されているように、この魚、雌が産み捨てた卵から生まれた稚魚を雄が献身的に育て、子育てが終わると死んでいく習性を持つ。描かれるのは、このタイトルが暗示する通り、壮絶なまでの父性愛。母性愛を描いた作品は古今東西枚挙にいとまがないが、父性愛となると、ここまで描ききったものは、そう多くはないだろう。

カシコギの雄になぞらえられるのは、主人公・チョン。家族愛に飢え、孤独に生きてきた彼にとって、息子・タウムがこの生を受けたその日から、彼だけがその人生を照らす太陽であった。

しかし、その太陽は、幼くしては白血病という難病を背負い、妻は父子を見捨てて異国へと去ってしまう。苛酷な治療の中で次第に生への執着をなくしていく幼い息子、高額な治療費。チョンは、自らの人生の歓びも誇りも捨て、息子に尽くす。

そして、息子に骨髄移植という最後の望みの光が差し込んだ時、彼自身には、思いもかけぬ残酷な運命が待ち受けていた。チョンが決意した最後の決断とは?
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