第3位:『赤い風車』
小さな巨人、ロートレックの半生
小さな偉大なる芸術家ロートレックの半生を描いた『赤い風車』 |
1864年にフランスのアルビというところの裕福な貴族の子供として生まれました。モンマルトルの盛り場に出入りし、パリの風俗を描出。石版によるポスターも有名です。
ロートレック(ホセ・ファーラー)は12歳と13歳の2度にわたって足を骨折し、それ以降下半身の成長がとまり身長は152cmです。モンマルトルのキャバレー「ムーラン・ルージュ」へ夜毎出掛けてはフレンチカンカン(踊り)のダンサーたちを描きます。彼は町の女(コレット・マルシャン)を愛しますが、彼の外見から相手にもされません。絶望したロートレックは酒に溺れるようになります。ある日、また階段から転落して死を迎えますが、死の床で自作が「ルーヴル美術館」に陳列される栄誉を知らされます。享年36歳。
本作はアカデミー賞を受賞したカラー美術、衣装デザインの2部門をはじめ、ザ・ザ・ガボールが唄った「ムーラン・ルージュ」の歌が絶品!
・1952年/アメリカ=イギリス映画
・上映時間:123min
・監督:ジョン・ヒューストン
・出演:ホセ・ファーラー、コレット・マルシャン、シュザンヌ・フロン、ザ・ザ・ガボール、クリストファー・リー、ピーター・カッシング
第2位:『ピロスマニ』
グルジアの郷土色が魅力の朴訥な秀作
グルジアの自然、描かれた作品に魅了される『ピロスマニ』 |
19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したグルジアの画家。プリミティヴィズム(原始主義)の画家に分類されており、彼の絵は動物たちや食卓を囲むグルジアの人々を描いたものです。1918年、貧困のうちに死去しましたが、死後グルジアでは国民的画家として愛されるようになりました。
ピロスマニ(アフタンジル・ワラジ)は商売や結婚といった人並みの生活に落ち着くこともできず、絵の依頼でも不本意な注文は拒否し、酒場やレストランの壁に絵を描いては生活の糧にしていました。ある日、ロシア美術界の権威の地であるモスクワへ行くのですが、ピロスマニは相手にされず、グルジアに戻ってきます。
多くの芸術家がそうであったように、世間と折り合いをつけることができず、酒に溺れ不器用に生きたニコ・ピロスマニの半生を素朴な演出で見つめています。映画史に埋もれてしまった観がありますが今回のガイド一押しの秀作!
・1969年/ソ連(グルジア)映画
・上映時間:87min
・監督:ゲオルギー・シェンゲラーヤ
・出演:アフタンジル・ワラジ、アッラ・ミンチン、ニノ・セトゥリーゼ
第1位:『アンドレイ・ルブリョフ』
中世ロシア、イコン画家ルブリョフの生涯を描いた大作
カンヌ映画祭国際批評家賞受賞作品 『アンドレイ・ルブリョフ』 |
ロシアの修道士で15世紀ロシア、モスクワ派の最も重要な聖像画家のひとりです。もっとも重要な作品は『至聖三者』(聖三位一体)のイコン画です。
激動の中世ロシアを舞台にして、『惑星ソラリス』などで知られるソ連の名匠タルコフスキーが壮大なスケールで描いた本作は6部構成で、大きくは「第一部動乱そして沈黙」、「第二部訓練そして復活」と副題が付けられました。
国策気味な演出も見られ、ルブリョフの生きた時代のロシア史が語られていきますが、最後に魅せるルブリョフのイコン画の数々に観る者を敬虔な気分にさせる凄さ!このシーンのみカラー映像にしたタルコフスキーのセンスも抜群です。画家の人生と中世ロシア史を絡めて描いた超大作として第1位に置きます。
・1969年/ソ連映画
・上映時間:182min
・監督:アンドレイ・タルコフスキー
・出演:アナトリー・ソロニーツィン、イワン・ラピコフ、ニコライ・グリニコ
今回紹介の5作品は、ガイドの独断ですが、他にも画家を描いた名作映画は沢山あります。新藤兼人演出で緒形拳が葛飾北斎を演じた『北斎漫画』。ピカソを追ったドキュメンタリー映画『ピカソ 天才の秘密』、ポーランドの現代絵画の鬼才の人生を描いた『ニキフォル 知られざる天才画家の肖像』、名匠キャロル・リード監督作でミケランジェロをチャールトン・ヘストンが演じた『華麗なる激情』など、どれも画家を見つめた名作映画です。
【関連記事】
アートな映画で学ぶパワフルライフ(人気映画・ヒット作)