『TAKESHIS'』 北野武監督に直撃インタビュー
映画評のこと、最近鑑賞した映画について
これまでより銃弾の数ははるかに多く、京野ことみさんとのガン・アクションも見どころのひとつ。 |
映画評について?
「ヨーロッパでは『悲しい映画』って言われてね」と不思議な表情をみせる。それもそのはず、本作では<感想が言えない映画>をつくることを目指したというのだ。
「今回の作品は、妙なテンションなんだよね。ストーリーは分かっているのに、疲れ果てた。どういうことかっていうと、自分の姿―悲しい、情けない、寂しい姿を見せられた感じがしてヘトヘトなんだよね」。
ヴェネチア映画祭での反応は『金返せ』『昔からのファンだけど、とにかく病院に行ってください』といったものもあったと気にしていない風な笑顔で語る。一方で『見事にブチ壊してくれた』『50年後に再評価される傑作』もあったという。ここまでコメントが分かれるのも珍しいが、後世になって認められる作品にもこの手が多いのでもしかしたら…。
最近鑑賞した映画について
「最近、映画観てるんだよ。ヒッチコック全作品。フェリーニの『魂のジュリエッタ』、ゴダールの『気狂いピエロ』はストーリーを追っちゃだめだよね。そのシーンの色使いと、やりとりが面白いんだ。『81/2』は疲れるよね。そうそう『フェリーニ 大いなる嘘つき』は、大嘘つきなんだけど、たまに当たっていること言うんだよね。それとね、その質問に対して返答する答えが、俺と同じ嘘で一緒なんだよ(苦笑)」。
色彩感覚・色へのこだわりについて
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色彩について
<キタノ・ブルー>と評される北野映画。『TAKESHIS'』では「青」と「赤」の対比が特徴であり、印象的だ。10年前に発売の北野武編集長「コマネチ!」(新潮社刊)(を今回のインタビューに持参)で自筆画を公にしたが、そのころから 「青」と「赤」といった配色にはこだわりがあったように思える。
「その絵はね、小学校以来で描いたんだよね、というより描かされたんだけど(笑)。色に関しては、交通事故の後遺症だね。街のネオンやビルが雑然として統一性がないのが嫌になった。それでそぎ落とすとブルーとグレーが残って、で『キッズ・リターン』(1996)は色をはじいた」。
「今回は、非日常の意味で「赤」と「青」にこだわった。現実には、ありそうだけど、ありえない部屋なんだよ。赤いポルシェが走行する橋の縁石にブルーのラインを入れたり」。劇中、<ビートたけし>のマンションの廊下カーペットが「青」なら掲示板は「赤」。売れない芸人<北野>のアパートのテーブルは「青」、で窓枠などや枕が「赤」といった具合。ビートたけしの移動車ロールスロイスはマルーン(赤茶系)。(あれも対比させようと思いませんでしたか?)「あれね、あの色しかないんだよ。一台は俺の車だしね」。そう監督の愛車が劇中に登場するのだ。「2台並べたら面白いかなと思って」というシーンの撮影場所は東京都・足立区。「映画的には塗った方が良かったかもしれないけど…(右ハンドルは)自分の車だからね」。ちなみに劇中登場する赤いポルシェとロールスロイスには雲泥の差がでる―「ポルシェはね、中古だし、安いから。でもロールスロイスは、みんなが止めると思うよ」がヒント。そこはご自身の目でお確かめください。
衣装、なかでもコンビニの制服について。どうオーダーされたのでしょう?
「あのオーダーは『コンビニの制服』。出来上がったら、さすがに倒れるかと思った。それで慌てて、同じ柄のタイルをつくって壁に貼ったんだけど、大騒ぎ。でも、『変えて』って言えないんだよね。きっとよくあるコンビニの制服はいやだったんだろうと思うよ。『衣装が良かった』って言わせないぞって感じ(笑)」。「でもさ、<北野>のセーターとか色合いもいいんだよねぇ」とポソリ。
<<ビートたけしは、お抱え運転手つきロールス・ロイスで移動する芸能界の大御所。ある日、局で自分にソックリな北野という男に知り合う。北野はコンビニでアルバイトしながらオーディションに通う売れない役者。そんな彼がビートたけしの世界に引き込まれたことから…。>>
『TAKESHIS' タケシズ』 |
―著名人が語る『TAKESHIS'』 ―
北野大(実兄)
『TAKESHIS'』の2面性は彼の本性。作っているのではなく、まさに地。
みうらじゅん(イラストレーター/漫画家)
この作品は武さんの映画の中でも、いちばんわかりやすい映画だと俺は思うんだ。
岩沢厚治(アーティスト「ゆず」)
僕が印象に残ったのは銃声。銃声って怖いものですよね、普通。それがこの映画の中では、昇華するためのひとつの禊に聞こえました。
北川悠仁(アーティスト「ゆず」)
武さんはいつも「やられた!」って思わせてくれる。
2005年11月8日発売「別冊カドカワ 総力特集北野武」より
Interview with "TAKESHIS'" Director TAKESHI KITANO
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