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【イラン】『風の絨毯』(2ページ目)

『運動靴と赤い金魚』の国から、また名作が誕生。世界遺産イスファハンと飛騨高山を舞台に伝統・風土の美をオールロケで撮影。なんといっても子役達が、可愛い~の。

執筆者:南 樹里

◆ストーリー飛騨高山。中田金太(三國連太郎)は、四百年前に消失した伝説の祭屋台を現代の匠たちの技と心で蘇らせようとしていた。その祭屋台を飾る見送り幕には、ペルシャ絨毯がいいと考え出す。江戸時代にシルクロードを渡ってきたペルシャ絨毯が祇園祭の屋台にかけられた史実がヒントだった。“伝統”と“現代技術”そして“日本”と“イラン”。異なる文化の融合の架け橋ともいえる絨毯のデザインは画家の永井絹江(工藤夕貴)が描いた。ペルシャ絨毯の製作は、古美術商を兼ねたペルシャ絨毯輸入業を営んでいる夫の誠(榎木孝明)が任される。二人の愛娘のさくら(柳生美結)は、絨毯の無事完成と母(工藤夕貴)の体調が回復することを祈るのだった。ところが誠がイランへ向かおうとした矢先に、絹江は交通事故で亡くなってしまう。あまりの悲しみに笑顔を失い、心を閉ざしてしまう、さくら。そんな娘の様子を見て父・誠は、一緒にイランへ渡ることを決心する。絹江のデザインの絨毯を完成させることが、悲しみを越える唯一の方法だと信じて…。イラン、イスファハンで二人は、親日派である絨毯仲買人のアクバル(レザ・キアニアン)に出迎えられる。子どものいないアクバル夫妻は、さくらを大歓迎する。とくに妻のファリバは、さくらを何とか元気づけようと精一杯の愛情を注ぐ。だが、さくらは文化の違いに戸惑い、よけいに心を閉ざしてしまうのだった。
すぐさま誠は絨毯を受け取ろうとするが、アクバルの様子がおかしい。なぜなら注文した絨毯は、編まれていないことがわかったから。土地の再開発にも手を出し、多忙なモラドハンは、アクバルからの注文をすっかり忘れていた。もちろん確認を怠っていたアクバルにも落ち度がある。アクバルは、どう話したらいいのか戸惑っていて事実を隠そうとするのに対して、日本語を話せない妻、ファリバは、事実を告げるべきだと必死になって「ノー!ジュータン」と伝える。落胆する誠にアクバルはペルシャ語のことわざで「望みが尽きたときが、新たな望みのはじまりだ」と慰める。そしてアクバルの甥っ子ルーズベ(ファルボー・アフマジュー)は、化学爆弾の被害を受け病床に伏せる父親に代わって観光馬車を回し、絨毯の毛糸を染める母と一家の生計を支えていた。ルーズベは、さくらを馬車に乗せたり、一緒に食事をしたり、遊んだりして彼女の心をほぐしていくのだった。
ある日、街中でさくらがいなくなり大騒動になる。実はルーズベの馬車に乗せてもらっただけだったのだが、途中で無理やり乗車した客の行き先が遠かったため、帰りが遅くなってしまったのだ。さくらの失踪を心配したアクバルは、ルーズべを頭ごなしに叱るのだった。イランに見切りをつけた誠が旅立ちの準備をしている頃、ルーズベは「心を一つにして力を合わせれば、なんだって出来る」と思い立ち「自分がモラドハンの工場を使うことを説得するし、手の早い織り子を動員し24時間体制で織れば、きっと20日間で仕上がる!」と提案する。だが、さくらの失踪騒動の後だけに、当初アクバルは耳をかさなかった。もしも20日で絨毯が完成すれば、祭りに間に合う。ルーズベの情熱あふるる説得に心を動かされるたアクバルは、帰国しようとする誠とさくらを引き止め、総力を挙げて絨毯制作にとりかかる。ルーズベも子供たちを集めて、毛糸を乾かす作業に協力する。手伝うさくらの顔にも笑みが広がる。大人も子供も総出で昼夜を問わず作業が続けられる。織り子の中には、染料のにおいで糸の色を読む盲目の少女がいた。さくらの顔の輪郭を指でなぞり、ほほ笑む少女に、さくらも言葉を交わす。屈託のないイランの子どもたちとの交流で、さくらの心は少しずつ明るさを取り戻し、ファリバにも笑顔を見せるようになる。
絨毯は順調に仕上がっていった。でも絨毯が完成したら、さくらは日本へ帰ってしまう。さくらに淡い想いを寄せるルーズベは複雑だった。ちょっとずつアクバルから日本語を学び、やっと自分の気持ちをさくらに伝えた―「ボク、キミヲ、タベタイ」「…?」。絨毯が仕上がる前に、ルーズベとさくらは絨毯にこっそり結び目をつける。ルーズベは青い糸、さくらはピンクの糸で、二人だけにわかる友情の証を刻むのだった。そしてついに絨毯が完成する。飛騨高山では40年に一度のさくら祭りが行われていた。豪華絢爛な伝説の祭屋台が姿を見せると、沿道を埋め尽くした見物客からため息が。その中でもひときわ威光を放つペルシャ絨毯。そこには、イランと日本の子供達、そして大人たち、そして何よりさくらとルーズベの思いが永遠に編み込まれている…。
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