Kiss and Music
小悪魔:
PerfumeはじめてのR&Bですねぇ。
先生:
「マカロニ」がR&Bっぽいという意見もありましたが、R&B度はこちらが高いですね。
博士:
即座にR&Bと反応できる時点で皆さんの感覚は相当鋭いですね。あっさり目のイントロと音作りで一瞬スルーしそうになったのですが、良く聴くとかなりリアルに黒っぽいです。黒っぽいというと日本人はサウンドそのものより黒人っぽいルックスで判断しちゃうんです。でもネイティブな連中はむしろそうじゃ無いものを求める。エレクトリックな感覚を程よくブレンドさせたこういうサウンドこそが、リアルな意味でブラックだと思います。
先生:
YMOの「Tighten Up!」など日本人がやってこそ意味のあるソウルミュージックみたいな世界ですね。capsuleの『FLASH BACK』収録の「You are the reason」あたりに繋がっている気がします。
博士:
今後、この路線は中田プロデューサーの感覚が加わって何か新しい化学反応を起こす予感を感じさせますよ。何となくSPEEDの「Long Way Home」を思わせる曲調で、メンバーにしてはウレシイ楽曲じゃないでしょうか?
研究生:
ニュー・クラシック・ソウル路線のような“真っ黒なR&B”ではないので、この手のサウンドに馴染みのない人でもサラッと聴けそうですね。R&B好きの人からすれば、白すぎて話にならないぜ!というレベルなのかもしれませんが、僕はこれ好きですね~。 この曲を境に、「Zero Gravity」や、「The best thing」など、ちょっぴり黒っぽくも思える、オサレムードを漂わせる曲が目立つ構成に。新曲群のみをピックアップすると、アルバムが指し示すベクトルは、『GAME』が持つ“刺激”から、“洗練”に変化しているように感じます。
助手:
研究生、今回はほんとに意見がよく合いますねー。黒っぽさ云々もありますが、あきらかに今回の新曲たちは洗練されていますよね。今思い返せば『GAME』ってすごいタイミングで発売されたアルバムだったじゃないですか?このアルバムで本当にブレイクするかどうか?みたいな。そういう意味では肩に力が入っているというか、気合十分。足し算の発想のアルバムだったんじゃないかなあ。逆に今回は完全にブレイクした後のアルバムで、いったん肩の力が抜けて引き算の発想になったのかな?っていう。世の中の気分も、ゴリゴリからスカスカになってきてるというのもあるんでしょうけれど。
研究生:
ほんとにやたら合いますね(笑)。で、スカスカ感!これも本作の重要なポイントだと思います。僕はその要素も含めて、新曲群からはちょっと黒っぽさを感じ取っています。ブラックの人たちが作るハウスやR&Bって、音数の少ないスッカスカなサウンドが多かったりしますしね。ちなみに次のトレンドになりそうなエレポップも、黒くはないですがやっぱりスッカスカサウンドが主流だったりします。
だから、“「Dream Fighter」、「edge」、「ワンルーム・ディスコ」がアルバムの全体像をぼやけさせてしまっているかも?”という助手の意見には、僕も同意見です。既発シングルで高密度なサウンドを持つ系統の楽曲と、そうではない新曲群が示すモードとのギャップは確かに感じます。中田プロデューサーのサウンドメイキングの過渡期と、日本におけるメジャー寄りのフロア物のトレンドの移行期を、図らずも同時に表してしまっているのかな?とも思ったり。もちろんこれは、Perfumeサウンドのさらなる進化の可能性と表裏一体の事象だとも思いますが。