テクノポップ/近未来型アイドル

近未来対談~Saori@destinyの失敗作?(3ページ目)

ミニアルバム『WOW WAR TECHNO』が失敗作だという意味では決してありません。MADムービーに果敢に挑戦したPVが・・・いや、見れば分かります。

四方 宏明

執筆者:四方 宏明

テクノポップガイド

エフェクトヴォイス

博士:
今やエレクトロのステレオタイプとなりつつあるエフェクトヴォイスですが、各アーティストごとに微妙に解釈の差というか個性が出てきましたね。

先生:
具体的にSaoriちゃんの特徴はどう捉えますか?

博士:
以前、エフェクトヴォイスは、サウンド志向のクリエイターが稚拙なヴォーカルをそれらしく補完する為の現代のウィスパーヴォイスといいましたが、Terukadoプロデューサーのアプローチは少し違いますね。サウンド自体は、ヴォーカルを楽器的に処理する必要も感じない。単に流行の便乗と捉えられる傾向もありますが、私は別の狙いも感じますね。例えば、パントマイムやダンスでよりオーバーに見せるためにあえて逆の動きをする技があります。全速力を現すのに前傾より反り返って走るポーズの方が逆にスピード感が出るみたいな。

先生:
話の流れがとても分析的になってきましたね。

博士:
サウンドでもコンプで潰した方がワイドレンジに聞こえたりする錯覚です。ヴォーカルにおいて音程の曖昧さは弱点でもあり逆に稚拙な可愛さを演出する飛び道具でも有ったのですが、この部分をオートチューンで固めてしまう事で注意はその歌い方や声質に集中します。そこがTerukado流と感じるポイントです。Terukado流オートチューンでは、情報を制限することでよりむしろキャラクターを際立たせているように感じます。

Airaのあの特徴ある甘ったるい歌声は、むしろオートチューンされ音程が固定された事で際立った様に感じます。同様の傾向がSaoriにも感じます。Saoriの場合、Airaとは逆にそのあっさり感が強調されて悪くは無いのですが、キャラクターが固まるにつれ、よりはっきりとした方向性を持たせてもいいかと思います。

切ない歌詞

先生:
前回の『JAPANESE CHAOS』でも作詞をやっていますが、カヴァーの「EZ DO DANCE」以外全て、Saoriちゃんによる作詞なんですね。

博士:
歌詞カードだけ見てるとテクノとはあまり関係ないちょっと切ない世界観が有りますね。本来のSaoriの世界観ですね。中でも「ステンレス・スターライト」ではちょっと異彩を放っていますね。

先生:
ハイ、僕もこの歌詞が一番気に入りました。「120度くらい違うミライ」とか。この曲は、月刊プロボーラーの佐々木喫茶の作曲・サウンド・プロデュースによるものですが、全体のアルバムに違和感なく溶け込んでいますね。

博士:
最後にこのミニアルバムを一言で言うなら、「イエィイエィのWOW WAR」です。

先生:
どっかで聴いたような・・・(苦笑)。
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