テクノポップ/フューチャーポップ

近未来対談~大人のための相対性理論(10ページ目)

『ハイファイ新書』がオリコン7位を記録した、ポストYouTube時代のポップ・マエストロ・・・相対性理論について助手、研究生、小悪魔(新キャラ登場)と共に分析してみました。

四方 宏明

執筆者:四方 宏明

テクノポップガイド

ジャンルへの批評性

研究生:
これらの事例から僕の中で浮かび上がるワードは、リアリズムから零れ落ちる“たそがれ感”や閉塞感など。誰もが日常の中で時折感じてしまう「ブルーな瞬間」なのでは。そして、それらを聴き手にわかりやすく伝えるために、極端な表現を行っている。色物でもひねくれポップでもない(ドリーミーな音楽だとは思いますが)、至極真っ当な音楽主義のバンド・・・生粋のロックバンドだと捉えています。

だから、「You Tube以降のポップ・マエストロ」というキャッチフレーズ(アルバムを買う際に知りました)も、僕は彼らのストレートな意思表明と自信の表れだと受けとっています。確かに“マエストロ(=巨匠)”のワードにぶち上げ的・挑発的なニュアンスは感じます。しかし、「日常のそこらかしこ潜むブルー」を絶妙に描き出す高いスキルを見るかぎり、マエストロへの道を目指すだけのポテンシャルを持ち得る存在だと、素直に評価してもよいのではないでしょうか。

先生:
歌詞に関しては辛口気味だった研究生、サウンド的にはかなり肯定的ですね。あっ、でもひねくれポップというのは、たぶん僕の中では、ロックを肯定的に捉えれば、生粋のロックです。ムーンライダーズ然り、XTC然り。ただ自分の中では、生粋のロック<ひねくれポップなんですよね。この辺りは、世代の差もあるでしょうけれど。

研究生:
サウンド面に関してはベースとするジャンルへの批評性を感じます。まず、サウンドの軸となるのは感情を高めきらない(そして萌え要素も含んだ)あの歌声でしょう。あくまで「歌モノ」としての意識が感じられます。ここを始点として、オルタナロックの“エッジ感”“いなたさ”や、ポストロックの“叙情性”“温かみ”を使用意図に合わせて掛け合わせているのでしょう。ルーツとなるサウンドを完全に相対化してる印象がありますね。

小悪魔:
すごい!わたし分析出来なくて悲しくなっちゃうけど、まさにこれですね!感激しちゃいました。相対化してる相対性理論!

研究生:
特にアルバムは、叙情的なサウンドにわかりやすいメロディが乗っかっている曲だと「現代版のシティポップス」の風情も湛えてもいるようです。“実験的”だといわれるサウンドを用いて、普遍的なものを作り上げた。それはポストロックサウンドを“実験的”ではなく、“センチメンタルなサウンド”だと解釈した彼らの批評性が生み出した成果だと捉えています。

先生:
研究生、いいポイントですね。確かにただ好きだからやったというより、批評性に裏打ちされている感じはしますね。

研究生:
ポストロック系アーティストには、センチメンタルな感情の喚起を目的としている人たちが多かったりします。小悪魔の言うブリストル一派もそうですが、現状の相対性理論に関しては、先に発言した「温かみ」の要素からシカゴ音響派との親和性を感じます。アイコンとなる『TNT』前後のTortoiseや、初期The Sea And Cakeや、彼らに影響されて出てきたバンドたち。 あとはシカゴ系ではありませんが、Dylan Groupや初期Mice Paradeもイメージできるのはと。

小悪魔:
この辺、同感です、わたしのなかで。全部ライヴ行きました。そうですね、繋がってますねー!
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