I love iPod
――「I love Pod」は、オープニングを飾るに相応しい、軽快でまさにラウンジにぴったりの曲ですね。PodはあのiがつくPodをイメージしてもいいのですよね。ちなみにiPodがアルバムの機材クレジットの最初に入っていますが、この曲のクリック・ホイールの音ですよね?ウエケン:そのとおり! I love PodではiPodのクリック・ホイールの音とアラーム音を使ってます。機材クレジットにiPodが入ってるのは単に音を使っただけでなく、iPodに製作中の曲の素材を入れてチェックしたり、サンプリングCDを聴いたり、製作ツールとしてのクレジットです。iPod自体がリスニング環境や、音楽の聴き方を変えてしまったというのも大きいですね。世の中に愛だの恋だのを歌った曲はたくさんあるのに、こんなに音楽にインパクトを与えているiPodをリスペクトした曲をだれも作っていない、ならばELEKTELが作ってしまえ!と。
ポリ:あわててiPod Shuffleを買いました。持ってないとかっこつかないですからね(笑)。
フェイクなブラジル
――「Premium do Brasil」など、曲名からも明らかなように、以前にも増して、ボサノヴァやサンバといったブラジル発祥のサウンドの影響が強いですね。お二人とブラジル音楽の出会いとは?ウエケン:ELEKTELの音楽はリアルなブラジルを目指してるわけではなくて、あくまでもヨーロッパ、アメリカを経由したフェイクなブラジルですね。「Premium do Brasil」のタイトルもパリの空港の免税店で見かけたお土産からとったんですが、ブラジル人によると正しいポルトガル語でないそうです。でもそこがELEKTELらしくておもしろいからそのままタイトルにしました。個人的にはリアルなブラジルとかボサノヴァは憧れてるんですが。でも東京国際フォーラムのジョアン・ジルベルトのライヴにも行ったときは、ジョアンがギターの弾き語りの途中で突然30分くらい固まったまま沈黙したりしてけっこうつらかった(笑)。
ブラジルとの出会いというと、アジムスの「ジャズ・カーニバル」とかマルコス・ヴァーリの「バトゥカーダ」とかなので、去年ブルーノートでやったマルコス・ヴァーリ・ウィズ・アジムスのライヴはおもしろかったですね。「フライ・オーバー・ザ・ホライズン」をやってくれなかったのが唯一残念。あとジョイスとかその娘のクララ・モレーノも最近気に入ってて、これはライヴで声がはもると感動的。ほかにもセルジオ・メンデスとか、いろいろ好きなアーティストはたくさんいるんですが、考えてみればどれもクラブのDJ経由で聴いてますね。
ポリ:前作でも意識していなかったわけではないんですが、今回はそれがより前面に出たという所です。出会いということになると、幼い時に聴いていたブラジルのハモンド奏者、ワルター・ワンダレイ(「サマーサンバ」などで有名)のオルガンサウンドということになると思います。ほかにもブラジル音楽と言えば、ジョビンやジルベルトは勿論ですが、エウミール・デオダートやジョアン・ドナートなどのエキサイテングかつ流麗なアレンジには憧れています。
ELO
――カヴァーを2曲されていますね。ボサノヴァ名曲「Girl From Ipanema(イパネマの娘)」にELOが音楽を担当し、オリヴィア・ニュートン・ジョンが30代で妖精役に挑戦した映画『ザナドゥ』主題歌である「ザナドゥ」! ジェフ・リン好きの一人としてもとても意外でかつELEKTELならではのユニークなカヴァーに仕上がっていますね。選曲の理由は?ウエケン:「ザナドゥ」は私が個人的に好きで入れました。確か以前、All Aboutのインタヴューでも好きなアルバムとしてELOのアルバムを上げたはず。でもそのときは自分のルーツである80'sをストレートに出すのに抵抗があって今回も「ザナドゥ」入れるか外すか迷いました。今また80'sリバイバルとか言われてて、80年代を生きてない20歳くらいのリスナーには新鮮に映るんでしょうが、80年代を通過してきた方にとっては懐かしく、アーティストとしてそれを前面に出すのは気恥ずかしいですね。
ポリ:「イパネマの娘」はELEKTELのイギリスツアーの時に、アンコール用のレパートリーとしてアレンジしたものを元にしています。イギリスでは思いの外評判が良かったので、オケ自体は大分昔の音源ですが、今回ヴォーカルをcokeshiさんにお願いして収録しました。