今回は、吉野君がサイト・ジャック(僕は、校正と多少の加筆担当)。吉野君のプロフィールは、こちら。なお、映画のタイトル自体が所謂"不適切な表現"となっていますが、タイトルを改変すると、この記事は成り立たなくなるので、そのまま使用しております。ご理解ください。では、始めましょう。
みなさん、吉野です。僕、今まで、モーニング娘。の話題ばっかり、四方さんに暴力的に送りつけてきました。最近ハロプロ系と距離を置いている四方さんの堪忍袋の尾もそろそろ切れ掛るかな、と。そこで、今回は趣向を変え、襟を正して、テクノの王道中の王道、YMOことイエロー・マジック・オーケストラについて、直球勝負で記事を書きました。
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1978年に発売されたYMOのファースト・アルバム『YELLOW MAGIC ORCHESTRA』。このアルバムのB面に収録されている楽曲のタイトルは、フランスの映画監督のジャン・リュック・ゴダールの作品から命名されたことは、テクノポップ・ファンのみなさんなら御存じの方も多いと思います。映画の内容と楽曲には何の関連もありませんが、ここで、ちょっとYMOファーストのB面とゴダールの映画やその他の背景について、解説を試みたいと思います。テクノから少し外れますが、音楽と映画のガイドになっているので、まぁ良いか、と。
あ、私、特に映画好き、とか、マニアと言う訳ではありません。ですんで、トンチンカンな事言っていたら、ご勘弁を。それでは、曲順に解説を述べます。
B-1. 東風
絶版の映画だと思ってましたが、2001年の暮れにDVD化されて、きっちり発売されていました。私、ネット通販でこの作品をただいま注文中ですが、西部劇の体裁を取った政治映画とのこと。ゴダールの実験作品には、何回か懲りた経験があるので、(ローリング・ストーンズ目当てで購入した「One Plus One」とか)多分一回しか見ません。これで、終わってはあんまりなので、以下、おせっかいな薀蓄を垂れ流します。
巷で、「ゴダール作品のタイトルを援用した」、と言われるYMOのファーストのB面ですが、映画の原題は、以下です。
東風=LE VENT D'EST
中国女=La Chinoise
気狂いピエロ=Pierrot Le Fou
YMOの曲名と映画の作品名が一致しているのは、あくまで邦題のみで、楽曲の英題とゴダールの作品の原題や英題に関連はありません。
例えば、「気狂いピエロ」こと「[Pierrot Le Fou」ですが、少し調べたところ、「Fou」は英語で言うところの「Fool」に相当する単語ですので、「精神異常」と言うニュアンスは、さほどないようです。実際、「Pierrot Le Fou」の英米でのタイトルは「Pierrrot Goes Wild」です。つまり、おそらく語感の為、あえてニュアンスをずらした邦題「気狂いピエロ」をそのまま直訳で英訳したタイトルが「Mad Pierrot」という訳です。
逆に「中国女」の場合、普通に仏訳すると、映画原題の「La Chinoise」となるのですが、YMOはそこに、わざわざ“Femme”と言う単語を挿入しています。同様に、英訳すると、ゴダールの「LE VENT D'EST」の英題「Wind from the East」。そのままになる「東風」では、YMOの場合「Tong Poo (YELLOW MAGIC)」と、(英米人にとって)まったく関係の無いタイトルになっています。
これが、どういう事かと言うと、例えばリスナーがYMOのファースト・アルバムを手に取った場合、日本人は「東風」「中国女」「マッド・ピエロ(=脳内直訳で「気狂いピエロ」)」の邦題で、容易にゴダールと関連付けが可能です。
しかし、初期YMOが主戦場に見据えていた米国のリスナーにとっては、
Tong Poo(YELLOW MAGIC)⇒Wind From The East( LE VENT D'EST )、
La Femme Chinoise⇒La Chinoise、
Mad Pierrot⇒Pierrrot Goes Wild (Pierrot Le Fou)
という訳で、曲のタイトルからゴダール映画を連想することは、ほとんど不可能です。
ここで、映画に詳しい方に伺いたいのですが、1970年代末期の、ゴダールの評価は、本国フランスとアメリカで著しく異なっていたのでしょうか?
個人的な想像ですが、堂々と共産主義支持の姿勢を打ち出していた、ゴダールは、当時の米国の大衆にはあまり評価されていなかったと考えます。もし、米国でのゴダールの評価が低かったとすれば、曲のタイトルからYMOの販売戦略の一端が読み取れることになり、興味深いですね。
いずれにせよ、YMOは、1978年に発表したファースト・ アルバムB面の楽曲群について、日本人向けには、ジャン・リュック・ゴダールを容易に連想できるタイトルを命名し、海外向けには、邦題のゴダール臭を消し去る英題を付けた。これは興味深い事実です。