(24)[ A TRIBE CALLED QUEST ]
ドナルド・バード、ロイ・エアーズ、リー・モーガン、カル・ジェイダー、ボブ・ジェームスetc...
ジャズ・ミュージックをサンプリング・モチーフとしてそのサウンドの特徴を成していたグループ。クールかつ知的で何処か感傷的で落ち着きさえ感じさせる、ヒップホップ・シーンにおいては明らかにメインストリーム・シーンの主軸とは隔絶したポジションに漂っていたグループ、それがア・トライヴ・コールド・クエスト(以下ATCQ)。
Q-ティップ、アリ・シャヒード・ムハマッド、ファイフ(1st発表まではジャロビも所属)、NYクイーンズ及びブルックリン出身のメンバーで構成されたATCQは89年夏シングル“Description Of A Fool”にてデビュー。
その年の秋にリリースした“Bonite Applebum”、その翌年の“Can I Kick It”が立て続けにヒットし、幸先良く1stアルバム『PEOPLES INSTINCTIVE TRAVELS AND PATHS OF RHYTHM』の発売に結びつく。
ジャズ・ネタ使いのクールなトラックはUKシーンにても人気を博すように。
91年には2nd『THE LAW AND THEORY』、 92年ミニ・アルバム『REVISED QUEST FOR THE SEOSONED TRAVELLER』、93年3rd『MIDNIGHT MARAUDERS』とコンスタントにリリース。
その後、Q-ティップの俳優業進出やアリのプロデューサー業など個々の活躍をはさみ、96年には『BEATS,RHYMES AND LIFE』、そして98年『THE LOVE MOVEMENT』を最後に惜しまれつつもグループの活動に終止符を打った。
ところでATCQといえば80年代後期から登場したヒップホップ界の新潮流、新時代への変革を志すニュー・ムーヴメントの先陣を切って活躍した?ネイティヴ・タン・ポッセ?の一員としての活動に触れなければならないだろう。
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ジャングル・ブラザーズ、デ・ラ・ソウル、クイーン・ラティファ、モニー・ラヴ、そしてATCQからなる?ネイティヴ・タン・ポッセ?とは、アフロセントリシティーというアフロ・アメリカンの原点となるアフリカ回帰を目指す運動を積極的に取り入れた行動原理にて差別や貧困などを訴える従来のギャングスタ的方法論ではなく自らのライフ・スタイル論に言及したヒップホップ・スタイルを提唱したヒップホップ・ポッセであった。
彼らのそうしたメッセージは多くのネクスト・ジェネレーション達の心を捉え、アフリカ的なコスチュームやペンダントなどファッションに至るまで影響を与え大きなムーヴメントが生んだ。
そのムーヴメントが拡大するに併せ、所属の各グループは各々の個性を発揮したオリジナルな方向にそれぞれ軌道修正し、オールド・スクールの良さは残しながらもアフロセントリシティーを取り入れたサウンドやビジュアルを売り物としたジャングル・ブラザーズ、既成概念を全て取り除きヒップホップの可能性と未来を追求したデ・ラ・ソウル、そして斬新で繊細なサウンドを常に模索しジャケット・デザインに至るまで綿密に計算された個性とアート性を追求したATCQ、といった別な方向に進みだした。
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ATCQを聴くと同時に、これら同時代の同じ範疇で語られる他のグループのサウンドを聴いてみるのも面白いかもしれない。
<参考資料>
アルバムライナーノーツ
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