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逆境を乗り越えてきたデフ・レパード(2ページ目)

ホワイトスネイクとともに来日が決まったデフ・レパード。何度も不幸に襲われながら活動を継続してきたバンドの歴史、そして最新作の情報を。

執筆者:田澤 仁


第二、第三の不運も乗り越えたデフ・レパード


ようやく軌道に乗ったデフ・レパードが4枚目のアルバム制作を開始した頃、第二の不運が訪れる。ドラマーのリック・アレンが事故で左腕を失ってしまうのだ。四肢を駆使して演奏するドラマーにとってこれは致命的だ。ちなみに一般的な右利きのドラマーの場合、左手は主にスネアドラムを担当する。つまりロックのキモである2拍、4拍のビートはこの左手から生まれるのだが、リックはその左腕を失ってしまったのだ。当時のロック雑誌には、他のメンバーは彼の復帰を待つというインタビューが掲載されたし、リック自身も復帰に向けリハビリ中という記事も載った。しかし、どう考えても復帰は無理だろう。誰もがそう思った。

『Hysteria』
リック・アレンが奇跡の復帰を遂げたヒット作『Hysteria』
しかしその3年後、1987年に発表された『Hysteria』は、前作以上の素晴らしい作品だった。そのプロモーションビデオを見て驚かなかった人は少ないだろう。リック・アレンがドラマーとして演奏していたからだ。彼は、電子ドラムを使うことでドラマーとして復帰することができたのだ。ペダルに電子ドラムをリンクさせ、足でスネアを演奏するスタイルには賛否両論があったけれど、デフ・レパードに不可欠なリック・アレンのドラムが戻ってきたことは、ファンにとっては喜ばしい驚きだっただろう。80年代前半に広まった電子ドラムは、当初はチープなサウンドで目新しいだけのものだったのだが、数年の間に進化を遂げ、サウンドもリアルになり、様々な演奏スタイルに合わせられるものになっていた。だからこそ、こうしたことが可能だったのだ。リックが怪我をするのがあと5年早かったら、復帰は無理だったかもしれない。

不運はこれだけでは終わらなかった。第三の不運は、続く5枚目のアルバムの制作時の1991年。今度はなんとギタリストのステイーヴ・クラークが死亡してしまう。それでもデフ・レパードはアルバム制作を続行した。ギターパートはフィル・コリンが一人で担当し、翌年『Adrenalize』を発表。これも大ヒットになっている。

その後のデフ・レパードは、ディオやホワイトスネイクに在籍したヴィヴィアン・キャンベルを加入させて再び5人体制となり、90年代から現在に至るまで活動を続けている。96年発表の『Slang』は、当時流行していたオルタナティブロックの影響が感じられる作品で以前からのファンには不評だったし、2002年の『X』もセールス的には振るわなかった。しかし2004年にリリースしたベスト盤、2006年のカヴァーアルバム『Yeah!』はヒットを記録。やはりデフ・レパードには80年代のサウンドを求めているファンが多いということだろう。

『ソングス・フロム・ザ・スパークル・ラウンジ』
最新作の『ソングス・フロム・ザ・スパークル・ラウンジ』は、以前の作風に近い快作
それに応えるように今年リリースされた『ソングス・フロム・ザ・スパークル・ラウンジ』は、『Pyromania』や『Hysteria』に近いサウンドになっている。シンプルでノリのいいリズムにポップなメロディが乗り、エッジの効いたギター、分厚いコーラスのハーモニーが周囲を固める。ポップで聴きやすいけれど、ビートはへヴィ、しっかりハードロックしている。期待を裏切らない、まさにデフ・レパードサウンドだ。初期にはアルバムを作るたびに不運な事件があっても、出したアルバムのほとんどがプラチナアルバムを記録したデフ・レパード。このアルバムもヒット作になるのは間違いないだろう。

この新作を引っ提げて、デフ・レパードは現在ホワイトスネイクとともにヨーロッパツアーの真っ最中。続く夏のアメリカツアーではREOスピードワゴン、スティクスといった70~80年代を代表するアメリカンロックバンドとの共演も予定されている。そしてその次はいよいよ日本にやってくる。


■デフ・レパード/ホワイトスネイク 日本公演
  • 10月23日(木)、10月24日(金)
  • 日本武道館
  • 問い合わせ:ウドー音楽事務所




【関連リンク】
デフ・レパード公式サイト
ユニバーサルミュージックのデフ・レパードの情報ページ
ウドー音楽事務所
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