似ていて当然?
80年代を中心に、ハードロック/ヘヴィメタルのヒットナンバー36曲を集めたコンピレーション盤『Come on Feel the Metal』。どこかで耳にしたことのある曲がぎっしり詰まっていて、ハードロックマニアでなくても十分楽しめる。 |
ただ、現在のヘヴィメタルのスタイルはある日突然誕生したわけではなく、徐々に変化して今日のスタイルが出来上がってきたものであるため、とくにヘヴィメタルが出現してきたとされる70年代については境界線が非常に曖昧だ。たとえばディープ・パープルとレッド・ツェッペリンはどちらもハードロックの元祖とされているが、ディープ・パープルのほうは、主要メンバーのリッチー・ブラックモアがその後レインボーを結成し、これがその後のヘヴィメタルのスタイルに大きく影響を与えているし、ディープ・パープルのフォロワーにはヘヴィメタルのアーティストも多い。そのためディープ・パープルがへヴィメタルの象徴的存在として扱われることも多い。このあたりがややこしいところだ。
ちなみにヘヴィメタルという言葉は、ステッペン・ウルフの名曲「Born to be Wild」の歌詞で使われ、その後一般に広まったというのが定説になっている。
音楽の中身の違いは?
90年代の実力派ミュージシャンが結集した、レッド・ツェッペリンのトリビュートアルバム『A Tribute to Led Zeppelin』。ハードロック/ヘヴィメタルにはトリビュート盤も多数制作されている。 |
もともとハードロックはブルースから生まれてきたものだ。ブルースバンドだったヤードバーズにいたジミー・ペイジが、「ブルースをすごくでかい音で激しくやったらカッコいいだろうな」と思ってレッド・ツェッペリンを結成し、そこからハードロックが生まれたという話もあるくらいなのだ。またブルースはジャズともつながりがある。だから、ハードロックにはブルージーな雰囲気があったり、ジャズのような自由なリズムやコードが使われたりしているというわけだ。
これに対し、へヴィメタルにはクラシックやプログレッシブロックの要素が聴き取れるし、リズムの面からは、強烈な4つ打ちでへヴィなビートを強調するところは、ディスコなどのダンスミュージックの影響もありそうだ。だからリズムがよりかっちり決まっていて、展開の美しさや華麗な演奏テクニック、様式美が重要な要素になるのがヘヴィメタル、ということになるのだ。
こういった考え方で見ていくと、ハードロックの中で、音楽的なスタイルやルックスなど、ある一定の特徴があるものをヘヴィメタルと呼ぶ、という定義が、おぼろげながら見えてくる。ただ、これ以外にも様々な考え方があるし、同じアーティストでも見る角度によってどちらとも断言しにくいこともある。音楽ジャンルに境界線を引くというのはなかなか難しいものだ。
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