30周年記念盤は誰にとっても理想形?
CDの生産時に大元となる音源(原盤)を作成する事をマスタリング、その原盤を最新の技術でアップデートする作業をリマスタリングと呼びます。機械的な技術はもちろん音楽的なセンスも要求され、担当者の作品への愛情と知識の深さが結果になって現れてしまう、とても大切な工程です。この工程を担当するのは、作品を客観的に判断する事が出来る第3者の方がよいという意見も無いわけではありませんが、アーティスト本人、もしくはそれに類する人が手掛けた方が制作者の意図する音、理想の音に近いものが出来ると言えるでしょう。
SUGAR BABE 『SONGS』 印象的なジャケットは、後に山下達郎『クリスマス・イブ』のジャケ写を手掛ける事になる金子辰也の手によるもの |
- 「SHOW」
- 「DOWN TOWN」
- 「蜃気楼の街」
- 「風の世界」
- 「ためいきばかり」
- 「いつも通り」
- 「すてきなメロデイー」
- 「今日はなんだか」
- 「雨は手のひらにいっぱい」
- 「過ぎ去りし日々"60's Dream"」
- 「SUGAR」
+ボーナストラック
『SONGS』の(現在ではプレミア盤となっている)1986年初CD化版はエンジニア吉田保によるリミックス・ヴァージョンでした。1994年発売版のリマスターはアーティスト本人である山下達郎監修によるもの、今回の30周年記念盤はアルバムの共同プロデューサーでありレーベル・マスターでもある大滝詠一の手によるものです。
例えば同じグループの同じアルバムでも、ヴォーカリストがリマスターしたものとギタリストがリマスターしたもので違ってしまう、というのはままある事※なので、その解釈の違いを楽しむ、というのが大らかでヨイのではないでしょうか。最新のテクノロジーとボーナス・トラックの曲数、価格の差で大滝版に少し分がありそうですが…。
※「THE ROLLING STONESはアルバムごとにMick JaggerのヴァージョンとKeith Richardsのヴァージョンが作られる。」という伝説めいた噂もありますし、Jimmy Pageが手掛けたLED ZEPPELINのリマスターCDはギターの音が大きい気がします。
その後のSONGS~SUGAR BABEの歌たち
不完全燃焼のままの解散だった為か、各メンバーのソロ・デビュー作にはSUGAR BABEのレパートリーだった曲が収録されています。- 大貫妙子 『Grey Skies』 に「愛は幻」、「約束」を収録
- 山下達郎 『サーカス・タウン 』 に「Windy Lady」を収録、
- 村松邦男 『GREEN WATER』 に「うたたね」を収録
実際にやっている方のサイトもあります > My SugarBabe
キングトーンズ 『SOUL MATES』 大沢誉志幸、佐野元春、高野寛他、豪華作家陣が参加した結成35周年記念アルバム |
彼らの代表曲「DOWN TOWN」は元々、日本初のドゥワップ歌謡コーラス・グループ、キングトーンズの為に書かれたもの。キングトーンズが歌うという企画が無くなってしまった為、『SONGS』に収録されたそうです。
その企画を1995年版として現実化したような作品がこの『SOUL MATES』。収録曲の半分を村松邦男がアレンジ、キングトーンズのメイン・ヴォーカル内田正人のスカイテナーで聴く「DOWN TOWN」もなかなかオツなものです。
クレイジーケンバンド 『あぶく』 2004年のアルバム『BROWN METALLIC』からのリカット・シングル。映画「約三十の嘘」の主題歌でもありました |
The Isley Brothers「If You Were There」※からSUGAR BABE「DOWN TOWN」へと受け継がれた独特のリズム・パターンをクレイジーケンバンドの横山剣が大いなるリスペクトと共に作った曲、それが「あぶく」。旅立つ男の決意を歌った歌詞が大人になるほど心に沁みる、メロウな名曲です。
※アルバム『3 + 3』収録。
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