「『熱い』と感じるのは恋をしているとき」
「熱くなる」話に、思わず照れ笑い |
ユ・ジテ「外国の映画は字幕で見るのが当然ですが、字幕も映画の大切なひとつの要素だと感じています。この作品では、字幕をいろいろな出し方をしていますが、字幕で何か新しいことを試みたかったのです。トニー・スコット監督が映画『マイ・ボディガード』で、重要な単語ををCGで大きくするなど面白い試みをしていたので、少し参考にしました」
―主人公の視覚障害者の、冒頭と最後のモノローグ「目に映る景色は私を熱くする」というセリフが印象的でした。、ユ・ジテさんが「熱くなる」のはどんなときですか?
ユ・ジテ「『目に映る景色は私を熱くする』というセリフを思いついたきっかけは、視覚障害者は色をどんな風に区別しているのかと思ったこと。色にも温度があるのだと思います。温度によって色も違っていて、視覚障害者も色を識別しているのではないかと考えました。だから、女性が「顔が赤くなった」と言ったとき、盲目の鍼灸師が『顔が熱くなったという表現の方が正しいです』と言うのです。また、私が『熱い』と感じるときは、恋愛をしているときではないでしょうか。もちろんその最中にも冷たくなることはあると思いますが…」
「子供のころは映画マニアではなかった」
―そもそも、映画を撮りたいと思った動機は何ですか?ユ・ジテ「子供の頃は映画マニアではありませんでした。あまり家も裕福ではなく、映画やテレビに興味を持つような状況でもなかったのです。演劇に接したのは、教会で神様をテーマにした劇をした時のことです。その後、大学で演劇科に進み、短編映画を撮っている先輩たちを見て、映画に対する夢が育っていきました。大学時代も演劇をしていましたが、背が高く、小さな劇場ではバランスが悪いからと、なかなか舞台に立たせてもらえなかったのです。代わりにセットや照明などの仕事をよくさせられ、だんだんと演出に興味を持つようになりました」
―敬愛する監督は何ですか。また、最近面白かった映画を教えてください。
ユ・ジテ「韓国人で尊敬しているといえば、パク・チャヌク監督です。尊敬している監督はあまりにもたくさんいるのですが、名前を挙げれば、スタンリー・キューブリック監督、アラン・パーカー監督、ポール・トーマス・アンダーソン監督、ジム・ジャームッシュ監督など。それぞれ独特な世界を作っている方々でとても尊敬しています。最近見た映画で気に入っているのは『クラッシュ』。演出をしているのは『ミリオンダラー・ベイビー』の脚本家で、すごく良かった。ただ、映画のスタイルは自然だったけれど、映画の見せ方やプロットには作為的な面もあり、少し窮屈な思いをしましたね」
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‘監督’と呼ばれるたびに恥ずかしそうな表情を見せていたユ・ジテ。しかし、インタビューの内容をご覧になってもわかるように、映画監督についてめちゃめちゃ詳しいのです。映像もとても斬新で、CGやテロップが効果的に使われ、ぶっとんだストーリーもめちゃめちゃ面白い、一言で「これまでに見たことがない作品」でした。俳優としてもすばらしいけれど、俳優だけではモッタイナイ。北野武やメル・ギブソンを超える監督兼俳優になってほしい!と思うのですが、本人からは「自分の作品に出演したいとは思わない。演出に専念したほうがよい作品が撮れると思うから」と堅実な答えが返ってきました。ぜひぜひ、長編を見たい!ところ。しかし、「長編になると、興行成績を考えて好きなものが作れない」と冷静なのも、役者としてのキャリアが長いユ・ジテならではの言葉です。
それにしても、一見クールなユ・ジテ、実は発想はかなりスゴイラディカルなのね、と心底驚き感動した作品でした。
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