Q6●企業年金に巨額の積立不足が出たのは金融機関の責任では?
よく聞く意見として「こんなに巨額の積立不足が出るとはとんでもない。何か資産運用の問題があったのではないか。理事長が勝手に変な運用したとか、金融機関が悪いとか。後者なら損害賠償できないのか?」というものもあります。これも、企業年金運用の実際とは大きく異なる理解です。企業年金運用においては、きちんと運用方針を定めて(社内だけで決めず外部のコンサルティングの意見を聞くことが多い)、機関決定をした上で金融機関に委託をします。役員が個人の好みで運用を決めることはほとんど不可能です。金融機関も予め定められた以上の勝手な運用は行えません。
このあたり、健保や共済で時折起きる横領や集中投資によるトラブルは企業年金では起きないような体制ができています。
しかし、これ以上に厳しかったのは世界的な景気悪化ということです。どんなに工夫を凝らしても、実際の世界の経済成長(この場合はマイナス)と無関係な運用成績は出せないのが年金運用なのです。(プロなら絶対的にいつでもプラスを出せるというのは数千億円規模の運用ではほとんど幻想に近い)。
企業年金の問題点は景気が悪くて会社の業績が下がったとき、年金運用の状況も悪くなることなのですが、JALの場合もこうした影響を受けたことが問題を深刻化させています。景気が良いときにたくさん資産を積み立てておくことには規制があり(税務署的には利益を減らして法人税逃れをしているように見えるため)、できれば規制緩和してほしいところです。
Q7●減額ではなく、制度を終了してしまったらどうなりますか?
今回、給付の削減が検討されているわけですが、制度を終了させる、という選択肢もあります。これは基本的には避けるべき選択肢ですが、そうせざるを得ない状況に陥ることも考えられます。まず、制度の終了については、対象者の半数以上を代表する労働組合の同意(規約型確定給付企業年金)、企業年金基金の代議員会の4分の3の議決(基金型確定給付企業年金。代議員会は一般に労使半数ずつで組成する)、厚生労働省の承認などが必要になります。
しかし、解散にあたってはOBの同意は求められていません。OBへの説明会などは必要になりますが、解散は会社と現役社員だけで決められる仕組みとなっています。
とはいえ、制度を終了した場合には、積立不足(最低積立基準額に不足する分)を会社が拠出し、OBと現役社員がそれぞれの権利にもとづき分配することが原則です。今あるお金だけを分配すればよいわけではなく、会社に積立金が戻るようなことはありません。
解散については、OBは弱い立場にありますが、分配金はOB優先で精算されることが多いようです。また、解散してもその時点で負うべき会社の責任が放棄できるわけではありません。