15年間の宝塚生活。伊織さんはそのほとんどを花組で過ごしました。伊織さんが下級生だった頃の花組は、まさに男役の宝庫。大浦みずきさん、安寿ミラさん、真矢みきさんを筆頭に、トップスターになった男役の何と多かったこと。
お手本が大勢いる環境の中で「宝塚の男役とは……?」を、ひたすらに学んできた伊織さん。繊細な青年の似合うナオちゃんがやがて、ヒゲを付けたマフィアのボスがぴったりな男役となりました。
男臭い…キザ…と形容される男役が昔より少なくなった今、彼女の存在は貴重でした。それは『満天星大夜總会』フィナーレ大階段での黒燕尾の場面の、たったひと言の掛け声にでさえ生きていました。
彼女を観ていると……男役とは、ここまでキザるんだ!……ということを一番に伝えていらした振付家の故・喜多弘先生を思い出すほどです。
伊織さんが多くの上級生から習得した“男役とは……”が、伊織さんを見て育った下級生たちに受け継がれて行くことを願っています。
華やかな容姿の上に、台詞を多く語らなくても、目で、心で芝居のできる男役の中の男役……。
同じく3名の男役さんも退団されました。
バウホール公演『エイジ・オブ・イノセンス』のシャンソニエでは素晴らしい歌唱力も披露した風輝マヤさん(1993年入団)。
歌だけに限らず、ダンス、芝居と三拍子揃った実力派。舞台姿も美しく、大人の男役として、宙組の貴重な存在でした。
t.a.pのメンバーとして早くから注目され、『ベルサイユのばら2001』新公ではオスカルを、今年『おーい春風さん』(バウ)で主演をした華宮あいりさん(1996年入団)。
どこにいても観客の目を引く華やかな容姿で、女役も素敵な人でした。