そんな脚本家ビッグ5の作品から1作ずつ選んだ名作ドラマベスト5をご紹介します。なお、それぞれの作品のレベルが高すぎたため、相当悩みまして、ランキングがつけられません。ですので、順位は脚本家名の五十音順で並べたものとなっています。ご了承ください。
5位:市川森一『淋しいのはお前だけじゃない』
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複雑な社会とそこに生きる人間の現実と並行してノスタルジックな世界を描き、夢と現実をごちゃまぜにすることによりファンタジーでいてそれでいてリアルで毒のある大人の寓話をつむぎだしています。
金曜ドラマで放送されましたが、視聴率が低くほとんど再放送されませんでした。しかし、この作品を観た数少ない視聴者は、口を揃えておもしろかったのに、なぜ視聴率が低いのかと不思議に思う、隠れた名作です。
梅沢富美男がメジャーになったのはこのドラマからですし、劇中で踊りのバックに使われた、ちあきなおみの『矢切の渡し』がヒットするなどいろいろなところに影響を与えました。
ちなみに、余談ですが、このドラマが放送された翌年には消費者金融の上限金利が引き下げられました。そして『タイガー&ドラゴン』放送の翌年にはグレーゾーンが金利撤廃に。歴史は繰り返しています。
沼田(西田敏行)はやり手のサラ金取り立て屋。暴力団の大物・国分(財津一郎)は浮気をした自分の愛人とその相手、旅芝居の座長(木の実ナナ)と女形(梅沢富美男)に復讐のため巨額の借金を負わせ、それを沼田に取り立てることを命じる。沼田は昔の縁から二人を逃がそうとするが、それがばれて自らも借金の連帯保証人にさせられてしまう。しかし客演で招かれた舞台で、二人に万札のおひねりが雪のように降ってくるのを見て、借金で苦しんでいる連中を集めて一座を組み一発逆転を狙うのだが……。
(1983年:TBS系)
4位:倉本聰『前略おふくろ様』
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ドラマのキーとなる「前略おふくろ様」で始まる主人公のぼそぼそとした語り口のナレーションをはじめ、かすみに一方的に惚れられたり、海ちゃんに振り回されて事件に巻き込まれるなど、サブキャストを通して描かれる何とも言えない人間のおかしみを描いています。料亭・分田上など、昔のものがなくなっていくことに対する哀惜の念なども心に刺さります。
実は、脚本を書いた倉本自身の母が亡くなったことも、このドラマとリンクしている部分があるように感じられます。ドラマでは、母を蔵王に残して東京にでてきたサブちゃんはひたすら母を想い、自分の母だけでなく他人の親も大事にする設定など、まったく関係ないとは思えないのですが、深読みしすぎでしょうか。
第1シリーズでは何話か他の脚本家が担当していますが、母の死を最初から伏線として織り込んでいった第2シリーズは倉本聰が全部書いており、本人の母親への想いが強く出ています。
母親を演じたのは倉本聰が現代の姨捨山だった東芝日曜劇場『りんりんと』に続いて戦前~戦後にかけて映画界の大スターだった田中絹代。そして第2シリーズで母の死がサブに伝えられた2日後に田中絹代も死去。ドラマ中に主人公にまつわる人の死を劇的に描く倉本作品ですが、ドラマ外でも劇的でした。
東京・深川を舞台に、照れ屋な板前の青年・サブ(萩原健一)とかすみ(坂口良子)、「恐怖」の海ちゃん(桃井かおり)、板前の秀次(梅宮辰夫)、政吉(小松政夫)や鳶の半妻(室田日出男)、利夫(川谷拓三)など下町の人々との触れ合いを描いた青春ドラマ。2シリーズあり、第1シリーズは料亭・分田上(おかみ役に北林谷栄)が舞台だが高速道路建設のためなくなり、第2シリーズは同じく深川の料亭・川波(おかみ役に八千草薫)が舞台。
(1975~76,76~77年:日本テレビ系)
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