夏ドラレビュー記事でイチオシは『すいか』とした上で「後日特集しようと考えています」と書いたんですが、それを今、後悔しています…
と、いうのも先の記事でも「内容を説明するのはむずかしい」と書いたのですが、今でも日常をたんたんと描く『すいか』のおもしろさを説明するのはやっぱりむずかしい!
しかし、リクエストも多いしもうすぐ終わりだ、がんばって書いてみよう。
ヒロイン・早川基子(小林聡美)はコツコツ働いてきた信用金庫の行員・34才。まじめがゆえに世の中にしばられて煮詰まっています。
彼女が他人としがらみを持つことがいやな売れないエロマンガ家・亀山絆(ともさかりえ)と三軒茶屋にある賄い付き下宿「ハピネス三茶」で再会。
これに下宿人でうそ泣きにはきびしいが心から泣く人にはやさしい大学教授の崎谷夏子(浅丘ルリ子)、若くて人生前向きの大家・ゆか(市川実日子)。さらに基子の同僚で同じように生きてきたけど3億円を横領して逃亡、違う道にいってしまった馬場万里子(小泉今日子)がからみ、渋谷のそばの三軒茶屋にそんなのどかなところがあるはずのないハピネス三茶を舞台に、お互いに影響しながら自分の生き方を見直し、ちょっとだけ成長していくほのぼの癒し系ドラマです。
さて『すいか』の特徴的な構成パターンは冒頭のエピソードが途中ほっとかれたように見えて、実は最後に効いてくるというものです。
たとえば第3話の100円玉貯金で買うエアコン、第4話の刺繍された制服など。そうすると『すいか』も最後に効いてくるのは初回の最初のシーンのはず。
そう思って見返してみると、最初のシーンは20年前、ハピネス三茶の前で28点のテストを親に見られたくないから燃やしていた基子と「1999年にハルマゲドンで地球は滅亡する」という双子の片割れの絆との出会いでした。
ハルマゲドン!ノストラダムスの大予言!!今となっては懐かしい響きです。二十世紀末にあらわれた終末思想は、いきづまっている人にはある意味救いでした。どんなに苦しくったってそこでリセット、『風の谷のナウシカ』などによれば人類滅亡ということでなく新しい世界になる期待もありました。
ところが1999年を過ぎてもハルマゲドンはなく、21世紀になっても昔のSFのように輝かしい未来はこなかった。あとは現在がひたすら続いていくのみです。こんな世界を生きるキーワードは「まったり」。脱力して生きる若い世代は身につけていますが、乗り切れないマジメな基子の世代や、人と関係に苦労する絆の世代が日常を生きていく姿をえがくのが『すいか』なんでしょうか。