木下恵介人間の歌シリーズ『それぞれの秋』(73年)
脚本:山田太一
演出:井下靖央、阿部祐三
制作:飯島敏宏、酒巻武彦
企画:木下恵介
出演:小林桂樹、小倉一郎、久我美子、林隆三、高沢順子、桃井かおり
新島家はありふれた5人家族だったが、次男・稔(小倉)の視点から、妹・陽子(高沢)は不良グループに入り、父・清一(小林)は上役に取り入るため愛人の後始末を引き受け、兄・茂(林)は愛人に別れ話をして自殺未遂をされる、とそれぞれが問題を持ち隠している事を描いていく。
最後のヤマは父の脳腫瘍。病気のせいで、父は妻・麗子(久我)に対する積年の不満をぶちまけ始める。しかし、バラバラになった家族は危機に直面して再び家族の絆を取り戻していく。
脚本の山田太一はこのドラマを「ドラキュラドラマ」と語っています。子どもが小さいときは家族は団結しているが、子どもが成長してそれぞれの生き方を始めると家族の中にドラキュラが生まれ、食い合い、また別のドラキュラが生まれるが、日常ではだれもそれを気づかない。
それまで主流のアットホームドラマの中に潜んでいた人それぞれの現実を暴き立てます。稔が家族全員の秘密に気がつくという構成は『岸辺のアルバム』の繁(国広富之)と同じで、二つのドラマは相似形になっています。