葬儀屋(岩城滉一)の弟(東幹久)は大学受験に失敗し葬儀屋を手伝うことになる。しかし兄から4月までの間、大病院の食堂でバイトするようにいわれ、さらに食堂の電話があるパターンで鳴ったら家に連絡するように、と謎の指示をだされる。実は食堂の電話は病院に勤務する兄の愛人(いしだあゆみ)からの「もうすぐ人が死ぬ」というサインであり、それを聞いて葬式の営業に出かけるのであった・・・
病院と葬儀屋を舞台に、生と死を感じさせるドラマでした。もちろん、ナレーションは東幹久がぼそぼそしゃべり、かつ趣味はカヌーなので最終回までに絶対に北海道にいくぞ、と思ってたらラストの想像シーンでようやくいってました。
『遺言』での死について扱ったのはガンであると思いこんだ五郎、トド(唐十郎)の遭難、中畑みずえ(清水まゆみ)の死のエピソード。五郎の思いこみは最近の倉本脚本から消えていたペーソスが復活し、トドの遭難も盛り上がり、また中畑みずえの死も心にしみるはなしですが、これまでの倉本流とはちょっと違います。それに三つも死についてのエピソードがあるというのが「散漫」との印象につながります。
この変化は、地井武男夫人(元女優・真木沙織)が昨年6月に乳ガンで亡くなった実話に影響されたんじゃないかと想像しています。夫人の遺言は「『北の国から』に再出演してほしい」というもの。これに倉本聰の旧作『君は海を見たか』(70,NTV 82,フジでリメイク)で、悪性腫瘍の息子のために理想の新居を建てたエピソードを組み合わせたものに見えます。
いろいろと文句を書きましたが、これも期待水準が高いためのこと。基本的には5時間半の長丁場を楽しませてくれました。
個人的には涼子先生(原田美枝子)の再登場がうれしかったですね。21年間ずーっと、UFOはどうなったの?と思ってましたから。「わたしUFO乗ったのよ」といってくれて、そうかやっぱり乗ったのか、と安心しました。
最後に連続ドラマ版は別格として、スペシャルでベスト3を選ぶと少年ものとしてよくできていた『'84夏』、真珠夫人…もとい、れいちゃんと尾崎豊が印象的な『'87初恋』、テーマ的に一番よくまとまっていた『'98時代』です。
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