次に、脚本の西荻弓絵。1990年代初めから活躍している実力派の中堅女性脚本家のひとりで、個人的にそのグループを「3ユミ・2エリ・1シズカと名付けています。そのメンバーと代表作は
3ユミ
西荻弓絵――『ダブルキッチン』『ケイゾク』
井上由美子――『ひまわり』『きらきらひかる』
神山由美子――『オンリーユー・愛されて』『天うらら』
2エリ
北川悦吏子――『愛してるといってくれ』『ビューティフルライフ』
小松江里子――『卒業』『セカンドチャンス』
1シズカ
大石静――『長男の嫁』『ふたりっ子』
そして、西荻弓絵の連続テレビ小説決定により、この6人のうち北川悦吏子を除く5人が今年NHKで仕事をすることになります。井上由美子が大河ドラマ『北条時宗』、神山由美子が『人情しぐれ町』、小松江里子が『陰陽師』、大石静が『オードリー』。これはちょっと偶然とは思えません。
民放のドラマは1980年代半ばぐらいからプロデューサ主導で進んでいます。そして、放送局は大会社だから人事のローテーションだとか昇進というものが避けられません。そうすると実績のあるプロデューサが現場を離れ変わって若手が入ってきます。
若手プロデューサにとっては、それまでのプロデューサが一緒に仕事をしていた実績のある脚本家では、あまり自分の意見を通しにくいため、自分と同じか下の世代を使いたがり、脚本家も若返りしていきます。
それに対して、NHKは民放に比べてプロデューサ主導体制への移行が遅れていて、ひとりの脚本家に頼りがちです(民放は脚本家分業パターンが多いが、NHKは大河ドラマ・連続テレビ小説のような大作でも基本的にひとりの脚本家が書きます)。
その結果、民放でキャリアの積んだ脚本家は需要によりNHKにいくという流れができているようです。
ちなみに、脚本家キャリアアップの法則「フジテレビで人気が出たらTBSに行って金曜ドラマを書け、TBSで人気が出たらNHKに行って連続テレビ小説を書け」という流れも作っています。前者の例が野島伸司『高校教師』、北川悦吏子『愛してるといってくれ』、野沢尚『青い鳥』、後者の例が大石静『ふたりっ子』、清水有生『あぐり』。これも放送局によりドラマのつくり方が違っているためにそうなっています。
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