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団塊ジュニアが語る、郊外型子育ての実感(5ページ目)

郊外育ちの団塊ジュニア、ガイド河崎。なぜまた子育ての場所として郊外を選んでいるのか? 郊外生活の光と影の実感を、現代思想・社会学系の言説に触れながら語ります。

河崎 環

執筆者:河崎 環

子育てガイド

「アッパーミドル幻想オタクの街」

美しい並木に彩られる街は、アッパーミドル幻想?
美しい並木に彩られる街は、アッパーミドル幻想? 
東氏は、ブランド化した郊外のこうした独特の「モラル観」をして、「共同幻想」と呼んだ。彼が子ども時代を過ごした青葉台とは、その「共同幻想オタクの街」なのだ、イデオロギー的に頑強な一種のテーマパークなのだと、趣味性の共有によってコミュニティができあがった秋葉原になぞらえて指摘している。

まさにその青葉台を間近にして子育てをしている私は、その意見にひざを打つ。セキュリティ幻想や、「どこどこに有名人が住んでいる」、「高収入の人が多いらしい」という、住人間のとりとめもない噂は、どちらかという「本人達がそう思いたい」圧力で事実よりも過大な姿を見せ、住民達を緩やかに連帯させているように見える。

冒頭のテーマに立ち返って、なぜ自分が郊外の街に住むことを選んだかを考える。潔癖に見えるかもしれないし、無粋と呼ばれることもあるだろう。自身が郊外で育ったために、子育てといえばそのイメージであったことはもちろんだが、やはりセキュリティや将来などへの見えない不安が実際に及んでくるリスクを最小化している、と自分自身に言い聞かせられる選択だったのではないかと思う。それを「幻想」と指摘されればそれまでなのだが、ラディカルな論客である東氏も子どもが生まれるなどして「守るもの」ができたときに、セキュリティとバリアフリーを軸にした発想が出現したと述懐していて、私は深く共感する。「安全で、綺麗で、素敵な街」。しかしこの幻想は、今日もこの街への入居者を呼んでいる。



参考文献
『貧乏クジ世代―この時代に生まれて損をした!?』香山リカ
『東京から考える―格差・郊外・ナショナリズム』東浩紀・北田暁大
『郊外の社会学―現代を生きる形』若林幹夫
『ファスト風土化する日本―郊外化とその病理』三浦展


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