離婚→子連れで再婚、といういわゆる「再婚家庭」が増えている。
かつての家族観にとらわれない家庭のあり方ではあるが、専門家に
よれば「再婚家庭特有の問題」として児童虐待が起こりやすいという。
再婚家庭の虐待事件とは、そしてそのわけは?


「再婚家庭」激増


離婚件数が激増している。厚生労働省の「人口動態統計(概数)」によれば、2003年の離婚件数は28万3906組と、多少増加傾向に歯止めがかかったものの、1991年以降12年連続で増加してきた(日経新聞記事2004年6月11日)。昨今では乳幼児や学齢期の子供がいる家庭でも、いわゆる父子家庭、母子家庭は全く珍しくない。そういった中、家族の構成も複雑になり、離婚暦のある女性と男性、それぞれが子供を抱えて再婚する、「再婚家庭」(ステップファミリー)も増えている。

中には、女性側に結婚暦はないが未婚の母であったり、男性側に子供がいて、出産はしていないが母となるケースもあったりと、ステップファミリーの具体的な内容は様々だ。

それぞれが事情を抱えつつも、新しい家族を築く。かつての「未婚の男女が結婚して、子供が生まれて鎹(かすがい)となる」という一元的な家族観にとらわれない、ニュータイプのファミリー像である。


「再婚家庭」の昏迷―虐待問題


しかし、最近多く報道されているのが、そういった再婚家庭における虐待。夫が妻の連れ子を虐待したり、妻が夫の連れ子の養育を放棄したり、または夫婦で共謀して子供を死に至らしめることも。2004年に報道された痛ましい虐待事件の中で、再婚家庭(または内縁関係)のケースは多かったという印象さえ受けた。2004年後半だけでも、内縁関係や再婚家庭など、複雑な家族関係で、実の親ではない大人が手を下した虐待事件は、あとを絶たなかった。(以下はその一部)

・栃木県小山市兄弟殺害事件 9月12日
・大分3歳児虐待 9月24日
・広島6ヶ月乳児虐待 11月9日
・大阪19歳男性虐待
・東京都町田市2歳児虐待 11月28日
・愛媛県祖母による2歳児虐待 12月26日


「血がつながっていない」ことの重さ


再婚家庭での虐待問題は昔から指摘されてきたことでもあり、古くは「継子(ままこ)いじめ」といったような表現をされてきた。

精神医学博士 小田晋さんは、その事例に触れ、このような説明をしている。

”母親の連れ子を継父が「しつけ」と称して殺してしまう例は、児童虐待ではもっともよく見られるケースなんですね。このように、継父的な立場にいる者の子殺しのことを、「ハヌマン・ラングール型の子殺し」と僕は言っています。ハヌマン・ラングールという猿がインドにいます。子育て中の母猿と配偶関係になった雄猿が、相手の連れ子を殺してしまうんです。

理由は、自分の遺伝子を持っている子供を母猿に育てさせた方がいいからです。動物の行動は、彼らの持つ遺伝子の意向に従うということが社会生物学で語られています。”


人間の世界での出来事を、動物の世界のセオリーに照らし合わせて語ってしまうことには抵抗がある。しかし、再婚家庭が持っている危険性として虐待を無視することはできず、認識しておくことは必要だろう。「血がつながっていない」ということには、私たちが価値観の変容だけでは乗り越えることのできない、原初的な重さがあるということなのだろうか。


なぜ虐待を「夫婦で共謀」?


一方で、2004年上旬の事件では、大阪府岸和田市で中学三年生の男児に父親と継母が食事を与えず、昏睡状態になるまで放置するという事件があった。なぜ、実の親までもが共謀して子供を死に至らしめてしまうのだろうか。

「再婚家族を孤立から守れ」(2月13日東京新聞夕刊)と題するコラムで、この岸和田市の事件を「子どもの虐待防止ネットワーク・あいち」の副理事長・白石淑江氏が論じている。白石氏はこの問題を「再婚家族」(ステップ・ファミリー)特有の問題として位置づけ、「『血がつながっていないから、そんなひどいことができる』と考えるのではなく、どうすれば、そこまでエスカレートする事態を防げたかを考えることが重要である」と指摘する。大切なのは、専門性のある相談機関を充実させることで、こうした親子関係や夫婦の離婚・再婚問題について適切なアドバイスができる機関を拡充すべきだ、と言う。

継母であることが原因で、子供に愛情が持てない母親。そして、虐待を容認し、自らも加担してしまう実父。また、その逆に虐待を繰り返す継父と、それを黙認する実母。ここには、単に「血がつながっていないから」では片付けられない、男女間の力関係や心理が働いているとは考えられないだろうか。

誰もそのような事態を望んで再婚などしない。しかし、現実にこのような事件が起きてしまう。親である前に男性であり、女性である彼らが、親として守らなければいけない何かを見失ってしまう瞬間があるのかもしれない。

(この項続く)次回:「ツギハギファミリー(後編)・再婚家庭がはぐくむ愛情」

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