かたつむり
子どもが見つけるカタツムリにも寄生虫はいる
「寄生虫がいるとアレルギーにかからない」という説があります。この説は、寄生虫の研究で有名な東京医科歯科大学教授 藤田紘一郎先生の著書『笑うカイチュウ』から有名になりましたが、実際のところどうなのでしょうか。

そこで今回は、「衛生仮説」という大前提の知識をご紹介し、「アレルギーと寄生虫」の関係について理解していこうと思います。

「衛生仮説」とは?

「衛生仮説」とは、1989年にイギリスStrachanらによる発表による研究で「先進諸国でアレルギーが増加しているのは、小さい頃に感染を経験しなくなったからだ」という説です(衛生仮説の詳細は「汚くてちょうどいい!子供の免疫を鍛えよ」をご参照ください)。

また、このStrachanらの研究は具体的に「アレルギー(花粉症)の発症は家族人数に関係する」という説も発表しており、「兄弟の数が多いと免疫を鍛える物質が増えるため、末っ子の方がアレルギーの感染率が低いのではないか」という仮説をたてています。他にも多くの学者がこの「衛生仮説」についてアレルギーとの関係性を発表しています。例えば……

■生後1年以内に乳児が絞りたてミルクを飲んでいると、喘鳴、鼻炎、アレルギー感作率が減少する
(von Ehrenstein OS, Elin Exp Allergy 2000;30:187)

■農家に生まれた子どもで妊娠中の母親が農場に出入りしている場合には、生まれてきた子どものアレルギー発症が減る。絞りたてミルクを飲んでいる乳児では、さらにアレルギー疾患が減る
(Riedler 2001 Lancet)

■1年以上母乳栄養の子どもではハウスダストの皮膚反応が少なく、アトピーになりにくい
(Shaheen SOら Am J Respir Crit Care Med 1997 ;156:1760-4)

■イタリアの若い青年兵士の成績によると、A型肝炎・トキソプラズマ感染症・ピロリ菌感染症の3種の感染症にかかったことのある兵士ほど、アレルギー疾患の有症率が減少
(Matricardi PMら, BMJ. 2000;320(7232):412-7)

など挙げられますが、その是非については現在では議論の余地のあるところです。

アレルギー研究は日進月歩

日本小児アレルギー学会誌(第21巻第1号1~6,2007)の中で、千葉大学大学院医学研究院小児病態学 河野陽一先生が、「環境因子と生態とのクロストークからアレルギーを考える(微生物による生態応答性の修飾を中心に)」というテーマの講演の中で衛生仮説についても始めにこう説明されています。

「アレルギーはアレルゲンに特異的な反応を基にした炎症反応であり、環境因子がアレルギーの発言を決定する重要な要因になっている。しかし、環境因子に対する生態の反応は均一ではなく、感受性の個体差を基に、環境因子と生体との関わりが単一の表現型に留まらないことも示されている。

環境因子に対する生体反応の多様性に関する研究が進められた契機の一つに、衛生仮説(hygiene hypothesis)と周辺の議論が挙げられる。衛生仮説は、Strachanらが1989年に発表した論文に始まるが、彼らはアレルギー疾患の保有率と同胞数など家族構成を解析し、アレルギー疾患保有率が同胞数に反比例することを示した。この現象を非衛生環境、すなわち感染の機会の増加がアレルギーに抑制的に働くと理解し衛生仮説としてまとめた。

衛生仮説の是非については議論のあるところだが、感染がアレルギーの発症の寄与/悪化因子としてではなく、抑制因子として働く可能性を示し、環境因子との相互作用をダイナミックに理解しようとする働きにつながった意義は大きい」

(以上、日本小児アレルギー学会誌 第21巻第1号1~6,2007』より引用)

ちょっと難しいので要約すると、「衛生仮説は議論あるところだが、感染とアレルギーを考える上で有意義なものである」ということです。

他、この話の中でおもしろいのは「胎児からの腸内細菌バランスがアレルギー発症の要因につながる」という内容。こちらも簡単に説明すると、「生まれたときは無菌状態の胎児の腸内でも、年齢を重ねるうちに大腸菌など体に有害とされる菌が見られ、同じようにビフィズス菌など有効とされる菌も増えてくる。この両方のバランスがアレルギーの発症に関係しているのではないか」という研究です。

>>衛生仮説のひとつ、アレルギーと寄生虫の関係>>