人は投資でいくら増えたか?をいつもチェックしたがります。そのためには、時価(現在の評価額)と投資元本(過去に投入した額面)の数字が必要です。そして、いつも過去に投入した金額との比較で投資の巧拙を短期的に判断してしまいます。しかし、仕入れた価格や過去の経緯などにこだわるから、投資が窮屈になり、心理的なストレスに苦しむのも現実です。

過去の投入額(投資元本)を忘れる!


もっとも簡単に投資を続けられる方法としては、過去を忘れることだと思います。
過去といってもいろいろあります。まず忘れるべきは、過去の投入額(投資元本)です。

投資元本が常に頭にあるから、それを越えたら勝ち、元本割れなら負けという早とちりをしてしまうのです。世界一の投資家バフェットですらそうですが、私たちは相対的な収益の獲得を狙っています。ですから、市場がマイナス10%のときに自分のリターンがマイナス5%だったら、素晴らしい成績といえます。そのためには、初期の資金投入額を忘れていた方が都合がよいのです。

だからといって、何も考えずにほおっておけばよいということでもありません。投資のプロセスこそ点検して、短期的な結果にこだわらず、長期的にベンチマークを上回っていくことを目標とするのです。運用の評価をする時は、特定の期間の中での収益率を問うことが重要です。いくら増えたかという絶対額を追いかけてはなりません。

【関連記事】本当の運用は%で考える!

過去の投資額を忘れていると、どんな相場環境においても平気で投資を続けられます。それこそ長期投資家にとって必勝のルールなのですが、今回のような暴落で何百万円と損をしていると認識しているときに、毎月購入(ドルコスト平均法)を続けるには精神力が要ります。しかし、損を認識していなければ投入を続けることに何の苦労もありません。

過去の投入額を知らなければどんな支出でも続けられるという好例が毎月払いの保険料です。万が一のために支出している保険料の累計額を知っていたら、人はなんと間抜けなことをしているんだろうと悔やむでしょうが、平気で長期契約をまっとうできるのは、過去の投入額を忘れている(計算していない)からです。

つまらないアンカーを破壊する!


第二に忘れるべきは、役に立たない過去の体験です。あの銘柄でこんなにもうかった。あの人にそそのかされてあんなに損した、などなどの過去のインパクトのある体験が何かの小さな物や名前に付着して覚えられていることがあります。すると、その後その銘柄名を聞くとアドレナリンが放出されてむやみに攻撃的になったりします。あるいは、嫌な記憶だったらそれを思い出すだけで胸がむかつくなどの感情的な反応が常習化します。

こうした感情と連結された記憶や物を専門的には「アンカー」というのですが、私たちは無意識のうちにたくさんのアンカーを作って簡単に物事を判断しようとします。ただ自分の判断は正当化したいので、「あれは直感」とか「そんな気がする」といって、過去の記憶との関連を無視しようと振舞うのです。
 

投資にも必要な捨てる勇気 


成功した人たちは、だれもが「捨てる勇気」を強調しています。

貴重な教訓として頭に刻むべき記憶はそれとして、それ以外の雑多な記憶や未整理の感情は、ゴミ箱に捨て去ることが一番です。偶然の失敗やゆがめられた敗因の記憶は、人を妄想と臆病の中に封じ込めて、合理的な判断力を奪います。
不要な情報をどんどん手放して、スッキリくっきりと現実をとらえたいものです。
 



※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。