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どれも便利で機能的な財布だが、それぞれに様々な使いやすさがある
使いやすい財布といっても、結局その人がどう持つのか、どういう使い方をするのかで違ってきます。だから、世の中には色んな財布があって、使う人によって色々で、そう考えるといわゆるファッションブランドの財布が、何故あんなにも同じ形をしているのかが、かえって謎のように見えてきま す。ということで、紙幣と小銭を一緒に入れるタイプの、いわゆる「財布」を集めてみました。使ってみると、それぞれに良い点があって、結局は、使う側の好みで選ぶしかないのだということがよく分かりました。でも、どれも魅力的で、中々絞れないんですよねー。
スーパークラシック「薄い財布 abrAsus」
これは、薄さに特化したオールインワン型の財布。紙幣を10枚、小銭を10枚、カード類を5枚入れて、ズボンのポケットに入れても、ポケットが膨らまないほど、薄さをキープするのですから、中々凄いと思うのです。薄さをキープする一番の方法は、内容物の重なりを減らすこと。この財布は、その法則を きっちりと守ってデザインされています。
財布で厚みが出るのは、小銭とカード。そして、薄さをキープしようと思ったら、留め具で財布を開かないように留めたいところですが、その留め具も厚みを生んでしまいます。ということで、この財布では、小銭とカードは重ならないように配置され、留め具は小銭が入る部分の厚みを利用するなど、財布内の配置が考え抜かれているのです。
紙幣は、最近流行というか、m+やrethinkなどの、言わば財布の最先端のタイプと同じ、財布全体を包む部分に配置し、その上を覆うようにカード入れが用意されています。このカード入れも最小限のパーツで作られていて、入れたカードが見やすく取り出しやすく、しかもカッコ良いのです。
クレジットカードなどの厚手のプラスチックカードなら最大5枚、実用性を考えると4枚程度入れるのが良い感じです。クレジットカード、キャッシュカード、メンバーズカードの3枚に名刺を数枚といったところでしょうか。
小銭入れは、二つ折りを留める部分を開くと現れます。確かに、このタイプの二つ折り財布の場合、この位置はデッドスペースになるのですが、そこを小銭入れに使うというアイデアは凄いです。かなり狭いスペースに見えますが、500円玉も入りますし、10枚程度の小銭の収納が可能です。取り出しやすさには多少難がありますが、浅いので中は一覧しやすく、思ったよりは使いやすいと思いました。
紙幣を留めるために、隅に差し込みがあり、さらに三角形のカバーも付いています(このカバーの三角と、カード入れ部分の切れ込みが重ならないように作られているのも薄さの秘密です)。ここに、SuicaなどのICカードを入れておくと便利でした(もしかしたら、メーカー推奨の使い方ではないのかもしれませんが、ガイド納富が使った限りでは、カードが落ちることもなく、改札もスムーズに通ることができて快適に使えました)。
ただ、あまり何枚もの紙幣を入れるのには向きません。といっても、10枚は収納できるので、2万円持っていて、1万円を崩して1万9,000円になっても大丈夫なので、日常生活には全く問題なく使えます。
さらに、紙幣を押さえる三角のカバーの下には小さな隠しポケットが付いていて、鍵などが入れられるようになっているなど、遊び心も忘れない、中々小粋な財布なのです。容量よりも使い勝手と薄さを重視した財布は、他にはrethinkの「Lim Wallet」くらいしか類例がないのですが、実際使ってみると、その「薄さ」が、如何に有り難いかはすぐに分かります。別途、カードケースを併用しても、まだ、そこらの財布より厚みを取りません。
COTONA「コンパクトウォレット デベソ」
こちらは、とてもシンプルな財布です。開くと、紙幣、コイン、カードの収納全てを一覧できる構造は、意外にありそうで無かったもの。全体の見た目も、まるでカードケースのように、シンプルというかすっきりしたものですが、これで財布としての機能は十分に果たせるように作られています。また、そのシンプルな形状のおかげで、革の素材感が存分に楽しめるようになっていて、革小物好きには堪らないところがあります。
構造は、紙幣入れ、小銭入れ、カードケース、名刺入れと、財布の中が4つに分けられていて、それぞれの仕切りの中に収納するという、それだけのものです。これが、使ってみると何とも楽ちんなのです。財布を開くと、全てが見渡せるため、出し入れに迷いがなく、とてもスピーディーなのです。このスピード感は、他の財布では味わえません。口が大きく開くので、カードを探すのも簡単。しかも、カードや小銭はかなり大量に収納できます。
紙幣に関しては、二つ折りして収納するので、使い勝手が今一つかと思っていたのですが、二つに折りさえすれば、短い距離で差し込めるので、むしろ速いくらいでした。名前の由来になっているデベソ型の擬宝珠でフラップを留めるスタイルも、押さえつけるだけで留められて、引っ張るだけで外れるので、これもまた「速い」のです。
広めのカード用の仕切りと、薄い名刺用の仕切りに分かれているのも、使いやすさと名刺が曲がらないようにという配慮の両方が同時に実現されていたり、マチ部分を使ってカードを分類できるなど、シンプルながらよく考えてあるのです。
m+「MILLEFOGLIE II」
初めて、エムピウの構造主義的財布「MILLEFOGLIE」を使った時の驚きと感動は、今でも忘れられません(参考:究極の使いやすさを実現した構造主義的財布)。紙幣の収納方法といい、折り曲げタイプの財布なのに、専用小銭入れのように立ち上がるギミックといい、その大量に入る収納力なのにコンパクトにまとまる構造といい、本当に斬新で、その斬新さは、さらに磨きがかかって、「MILLEFOGLIE II」に受け継がれています。
基本的な構造は、MILLEFOGLIEと同じです。外周部に紙幣を差し込み、その上には開くと立ち上がる小銭入れ、その上には3つに仕切られたカードケースと、同じ方向から全ての機能にアクセスできます。このスタイルは、紙幣と小銭を出すにも、カード類を出すにも、財布を持ち替えずに済むのがとても楽なのです。
また、紙幣の左右に余裕があるので、紙幣を斜めにして出し入れできるし、適当に突っ込んで良いのも魅力。この紙幣を差し込むタイプの財布の場合、紙幣の出し入れに手間取ることもあるのですが、この財布ではそれもありません。
その他、細かい使い勝手は、以前の記事(究極の使いやすさを実現した構造主義的財布)を 参照していただくとして、IIで改良された部分を紹介しましょう。それは、紙幣押さえのカバーにSuicaなどのICカードを入れられるようになったこと。 これで、自動改札に対応しました。さらに、ここに名刺も入れておくと、領収書をもらうときなどの、名前の提示の際に素早く出し入れできて便利です。
また、改めて便利だと感動するのが、立ち上がる小銭入れ。広くて、壁が高く立ち上がるから、本当に小銭の出し入れがスムーズでストレスがありませ ん。この便利さは、専用の小銭入れ以上というか、これだけ小銭の扱いが楽な財布を他に知りません。しかも、紙幣の取り出しと同じ方向から持ち替えずに使え るのです。
現在のラインナップは、厚さ違いの3種類、それに素材や色のバリエーションがあって、中々豊富です。厚さに関しては、高さが25mm、27mm、 30mmの3種類。カードや小銭を沢山入れたい人は30mmを、コンパクトさを重視するなら25mmを、そして、ナチュラルヌメ革の経年変化を楽しみたいなら27mmを選ぶのがお勧めです。
財布は、常に身に付けているし、ポケットから出し入れする機会も多いので、良い革を使っている場合、2年も使うと艶が出て、経年変化を楽しみやすい革小物の一つです。「MILLEFOGLIE II」のラインナップには、それを狙ったナチュラルヌメ革仕様のものがあって、これが、使い込むとキレイなアメ色になります。上の写真が、新品と2年使ったものを並べたものですが、もう別物ですね。
NAVA「Ark-Line Slim mini」
これは、財布ではなくポーチなのですが、男性も使える小型のポーチというのは意外に良いものが少なく、しかも、これだけ小さくて、尚且つ、身に付けて持ち歩けるなら、これは財布として使ってしまうのも良いのではないかと思ったのでした。
実際、軽くて(約200g)、文庫本と手帳、あと小物が少々入るという、とてもコンパクトなサイズです。普段持ち歩くものを入れて、後は財布ではなく、ファスナーポケットを財布代わりに使ってしまえば、このポーチ1つでどこにでも出かけられるわけです。
前面上部にあるファスナーポケットは、小銭や紙幣を入れておくのに丁度良い大きさ。位置もポーチの前面上部ですから、開閉もしやすく、中も見やすい位置です。仕切り無しで、紙幣も小銭も同時に取り出せるのは、慣れないうちは戸惑うのですが、慣れると凄く快適です。お釣りも、もらったままの状態で放り込めるわけで、このスピードにかなう財布は他にありません。
ただ、カードも一緒に入れたら使いにくかったので、カードケースは別途用意することをお勧めします(参考:カードケースを考えていて気になった5つ)。前面のポケットに、名刺とカードケースを入れておくというのも悪くないです。ICカードはカードケースの中に入れておいて、ポーチごと改札機にタッチという使い方も可能です。
実際に使ってみたのですが、本気で、ポーチを財布代わりにするというのはアリです。何というか、面倒くさくないんですね。NAVAのポーチは、素材感も良いし、元々使いやすいので快適でした。
ガイド納富の「こだわりチェック」
という感じで、どの財布も使ってみて、その良さを再認識しました。特に、スーパークラシックの「薄い財布 abrAsus」やエムピウの「MILLEFOGLIE II」のような、シンプルさではなく、徹底した作り込みとアイデアで勝負した財布は、使っていて不思議な充実感がありました。使うたびに、そのアイデアの見事さを実感できるのは、小物使いの醍醐味でしょう。何かとシンプルであることが持て囃される中、アイデアを注ぎ込んだ結果の多機能は、それが使い勝手のためのアイデアである以上、煩雑にならず、むしろスッキリと使えるものなのです。
一方で、シンプルであるけれど機能を押さえているCOTONAの「コンパクトウォレット デベソ」の、革製品としての面白さや、財布としても使える、本気の多機能ポーチ、NAVAの「Ark-Line Slim min」のような、手元に置いて初めて分かる、その真価も、使い手の力量が問われているようで、それもまた楽しいものです。
実際、こんなに様々な財布があるにも関わらず、何故、デパートの紳士物売り場には、ブランドだけが違う、同じ形の財布が並んでいるのか、よく分かりません。今後、変わってくるのでしょうか。財布には、まだまだ多くの可能性が残っているのではないかと、今回、個性的な財布を使い比べながら感じたのです。
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