メッセンジャーバッグは機能的だからこそ流行した
ro「HOWARD
MESSENGER ブラック」
37,800円 (税込) |
メッセンジャーバッグは、元々、ニューヨークあたりで自転車に乗ってオフィスを回って書類を届ける人達が愛用していたものだそうです。短くしたストラップをたすき掛けにしてバッグは背中に回して自転車に乗り、届け先でバッグを腹側に回して、フリップをはね上げて素早く中の書類を渡したら、フリップを下ろして背中に回して走り出すわけです。
多分、最初は、そういう使い方には、たすき掛け出来る前面フリップ型のカバンが使い勝手が良かったことから雑嚢的なカバンが使われ始め、徐々に洗練されていって他の用途の人達にも拡散していった結果が、現在のメッセンジャーバッグと呼ばれるタイプのカバンなのでしょう。で、その一つの完成形が、フライターグのカバンなのですが、あれはあれで、もちろん良いカバンでガイド納富も好きなのですが、ちょっと若向きというか、実用本位過ぎてデザイン的にも、そのタフな構造的にも、日本人の大人が普段使うには、ややオーバースペック&馴染みにくい、という感じなのです。
つまり、本物のメッセンジャーバッグは、ちょっと引いてしまうけど、あの便利さは捨て難いとか思った人がいっぱいいて、今やグッチなどの高級ブランドにもメッセンジャーバッグと呼ばれる形のラインアップがあったりして、メッセンジャーバッグというコンセプトが独り歩きしているのが現状でしょう。そのおかげで、厳密に言うとメッセンジャーバッグではないかも知れないけれど、とても使いやすい大人のショルダーバッグが登場してきていると思うのです。
今回取り上げる、roの「HOWARD MESSENGER」も、そんな大人使いにデザインされたメッセンジャーバッグの一つです。本来、書類を運ぶためのバッグですからビジネス用途やクリエーターの使用に向いているんですね。このカバンを使ってみて、書類を持ち歩くカバンの選択肢として、メッセンジャーバッグを見直してしまいました。
大きめの書類やノートの出し入れを考えたサイズ設計
フリップを上げると中はこんな感じ。 |
この「HOWARD MESSENGER」は、横に広く、マチは狭め(内径で約7cm)になっています。サイズはB4版が楽に入る大きさなので、通常の書類やバインダーはもちろん、A4版の雑誌のゲラなど、比較的大きな書類も持ち歩けます。マチが狭めなのも、一度に持てる量と紙の重さを考えて導き出されたもの(かどうかは分かりませんが、色々入れてみたら、そう考えても良いと思える結果でした)。ガイド納富はA4サイズのノートやバインダーを持ち歩くことが多いのですが、その出し入れのスムーズさは、これまで使ったカバンの中でもトップクラスだと思いました。
それは、サイズバランスだけでなく、例えば開口部左右にあるカバン本体とフリップ部分を繋ぐ部分にギャザーが付けられていて、開閉のスムーズさを保証すると同時に、左右からの雨などの進入を防ぐ機能を持たせていることや、裏地に使われている布の滑りの良さ、肌触りの良さ(そしてデザインの良さも)、縦に長く取られたベルクロで、フリップの開閉がスムーズであることなど、細部まで計算されているからこその使いやすさ。建築家とアパレルデザイナーのコンビならではの考えられたカバンです。
小物類は、外側に収納できるように、モールスキンや文庫本が横位置でもすっぽり入るポケットを二つ、ペン差しを3本分用意して、メイン部分は広くシンプルに、という構造も、主に書類を運ぶというコンセプトへのこだわりが感じられます。その分、ポケットのマチは広く取って、iPodやデジカメ、ニンテンドーDSなどの厚みがあるものでもすっぽりと収納できます。ペン差しがもう少しだけ太いと、大きめの万年筆が入れられるのに、と、そこだけは残念でした。
裏側にはA4サイズの雑誌も入る幅の
ファスナーポケットがある |
後ろにはファスナーポケットがあって、これがしっかりA4サイズあるので、雑誌を突っ込んだり、手に持っていたモノをとりあえず入れて移動する時などに、とても便利です。開閉がしやすい、大きなリングが付いているし、雑誌などは単に突っ込んでおけばよいように、高さを浅めに設定してあるのも見事なセンスだと思いました。このあたりの「実際の利用」を考えたデザインは、メッセンジャーバッグ発祥の地でもあるニューヨークのブランドならではですね。
次のページでは、「HOWARD MESSENGER」独自の分割型フリップの魅力など、具体的な使い心地をレポートします。