落語家は扇子と手拭のエキスパート
戦う落語家林家彦いち師匠はグッズ好きとしても有名。
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扇子と手拭と言えば、日本の夏の必需品ですが、この二つを商売道具にしている職業もあります。それは落語家の方々です。落語の世界では、扇子を「風」、手拭は「マンダラ」と呼び、高座上ではある時は煙草になり、ある時は手紙になるなど、様々に変化して使われています。また、ご贔屓筋への配り物として、自らオリジナルの扇子や手拭を発注することも多いなど、扇子と手拭のエキスパートが落語家の方々なのです。
今回、そんな落語家の中でも、様々なモノへのこだわりで有名な、林家彦いち師匠に、扇子と手拭の選び方を教えていただきました。彦いち師匠は、カメラやアウトドアグッズなどのこだわりについて雑誌に書いたりされているだけあって、モノへ向ける厳しい眼差しとセンスは一流です。
男の扇子は7.5寸(22.5cm)の平たいものが基本
「男持ちの扇子では、普通僕たちも使っている7.5寸(約22.5cm)のものが、一番使いやすいサイズですよ。それで、中の骨が14本で、閉じた時に竹部分が広く紙部分をカバーしているものが良いものとされています」と彦いち師匠。また、閉じた時になるべく平たい方が粋なのだそうです。女性の場合は、少し短い6.5寸(約19.5cm)のものがベストの長さ。
確かに、安い扇子は骨の数が多く、その分竹部分が細くて、畳むと紙部分が広く露出します。一方、扇子屋さんで高いものを見ると、竹部分の幅が広く、畳むと紙部分より竹部分の幅が広くなっています。紙が細かく畳まれていないので、絵などもキレイに見せることが出来ます。確かに、骨の数が多過ぎる扇子よりも、少ない扇子の方が良い感じです。
「人によっては、この14本の骨を何本か抜いて作ってもらう人もいますよ。そうすると、扇子が途中までしか開かないんですが、それがカッコ良いと言うんです。そのあたりは、個人個人でのこだわりですね。僕は、扇子の先が少し削ってあるのが好きです。これは袂から出す時にひっかかりにくく、スムーズに出し入れ出来るようにするためだそうです」と話された通り、彦いち師匠が真打ち昇進の時に配った扇子は、先が削られたタイプになっています。
この骨が14本(両端を除く)なのが良い扇子と言われている。
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このように、竹部分が広く全体が平たくスマートに畳めるものを選ぼう。
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持った時にスーッと手に収まるものが最高
持ったときの手への馴染み具合が最も重要なポイント
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他のチェックポイントは、
○紙はなるべく薄くて強いものが良い
○閉じた時の根元の部分がキレイに揃っているものが良い
○要(根元で骨を留めている部分)の留め具が竹にピッタリと吸い付くように付いているものが良い
○竹の材質が良いもの
といったところです。そして、彦いち師匠によると「持った時にシュッとした感じがするものが良いんです。シースナイフを選ぶ時の感覚に近いんですよ」ということです。
あと大事なのは、「さりげなさ」。さりげなく実用という感じで選ばないと「変に通ぶったオジサン」になってしまいます。よく、男性用に真っ黒な扇子がありますが、そういう極端なものよりも、竹の色は白っぽいものと茶色っぽいものの二本を用意して、服の色に合わせて使い分けると良いそうです。
「あとは、頻繁に開閉するのはカッコ悪いので注意しましょう。それと、落語家というと、やたら扇子をパチパチやる印象があるみたいですけど、そんな落語家はいませんよ(笑)」と彦いち師匠。要するに「扇子を使ってまーす」という感じになるのは、さりげなくない、ということなのでしょう。
左が良い扇子、右は安い作りの扇子。この部分を比べても差は一目瞭然。
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この扇子は先が削られているタイプ。紙が薄く平たくて美しい良い扇子のお手本だ。
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