伝統工芸の極致を行く芸術的な機械式時計
伝統は、継承者がいなければ途絶えてしまう。また、一度途絶えてしまうと復興が容易でないのが伝統である。ブランド創設から25年にわたり、機械式時計の継承者を自ら演じてきたゲルト・R・ラング氏は、時計技術ばかりでなく、伝統工芸にも目を向け、熟達のクラフトマンシップを堪能させる素晴らしい限定コレクション「エディション・ツァイトツァイヒェン」を今年発表し、話題になっている。これもまた25周年を記念するにふさわしい逸品である。
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「エディション・ツァイトツァイヒェン」。左:植物モチーフによる全面スケルトン・モデル、CH6721ZR I。手巻き。ローズゴールド・ケース、径40mm。価格未定。右:植物モチーフ、文字盤を一部くりぬいたスケルトン・モデル、CH6721ZR II。手巻き。ローズゴールド・ケース、径40mm。価格未定 |
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裏面からもスケルトンの魅力を堪能させるムーブメント |
ドイツ宝飾産業の中心地として名高いフォルツハイムで活躍する名匠ヨッヘン・ベンツィンガー氏に協力を仰いで誕生した「エディション・ツァイトツァイヒェン」のモデルは全部で4種類。すべてムーブメントに伝統的なスケルトン加工や繊細な彫金装飾が施されている。全面スケルトン、文字盤の一部を透かしにしたスケルトン、ドラゴンの躍動的なモチーフを配したスケルトン、そして手動旋盤によるギョーシェ文字盤に設けられた窓からスケルトン・ムーブメントが見えるモデルなど、それぞれ趣向は異なるものの、芸術的な仕上がりには目を見張るものがある。「時計の本質はディテールに宿る」とは、ラング氏の唱える美学だが、クロノスイス独得のケースや文字盤のデザインのみならず、これほどまでにムーブメントを徹底して美しく仕上げた例はまたとないだろう。そこには、価値あるものを永遠に美しく残したいという願いが込められている。
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「エディション・ツァイトツァイヒェン」。左:ドラゴンを配したスケルトン・モデル、CH6721ZR III。手巻き。ローズゴールド・ケース、径40mm。価格未定。右:スモールセコンド窓付きギョーシェ文字盤モデル、CH6721ZR IV。手巻き。ローズゴールド・ケース、径40mm。価格未定 |
最近の時計といえば、先端素材や未来的なハイテク・デザインに注目が集まる一方だが、「エディション・ツァイトツァイヒェン」は、そうしたトレンドとはまったく無縁であり、伝統の再発見をもって時計好きに新鮮な感興をもたらす逸品である。品名にあるドイツ語の「ツァイトツァイヒェン」とは、「時報」という意味。なかなか意味深長である。最近広く見られるビジネス重視、マーケティング主導の時計づくりを嫌い、職人魂なくして機械式時計はありえないと考えるラング氏が発する警鐘をそこに見て取ることもできる。冒頭に紹介した言葉のように、「100年後」も時を刻むタイムレスな機械式時計、それがクロノスイスの理想なのだから。
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クロノスイスのオーナーで時計師のゲルト・R・ラング氏。東京銀座の時計店アーム・オルロジュリにて |
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