華やかとはこういうこと! 尾形光琳『燕子花図屏風』
国宝 燕子花図屏風 尾形光琳筆 六曲一双 江戸時代 18世紀 根津美術館蔵 上が右隻、下が左隻
この屏風が公開されるのは年に1回、毎年5月、燕子花の咲くころだけ。こちらも実際に見てみると、『那智瀧図』と同じくその大きさと色使いに驚かされます。 各隻縦150.9cm、横338.8cmの大きな屏風は、存在感が抜群です。
この屏風を描いた尾形光琳は、京都の裕福な呉服商に生まれ若い頃は放蕩三昧。実家が没落してしまい、お金を稼ぐために30を過ぎ、やむにやまれず(?)絵を職業とすることを選んだのだそう。『燕子花図屏風』は、そんな光琳の比較的初期の作品。小さい頃から書画に慣れ親しみ、常に流行の最先端に触れていた光琳が、知らず知らずのうちに培っていた芸術的感覚が、この屏風を生み出しました。
キラキラと光る金地に、燕子花の鮮やかな色彩は、遠くからでも目に飛び込んできます。花弁の群青、葉の緑青、そして背景の金色と、この屏風に使われているのはこの3色だけ、シンプルなのに華やかで強烈です。
燕子花のてっぺんをなぞっていくと、右隻(右側の屏風のこと)はなだらかに、左隻(左側の屏風のこと)はテンポよく、それぞれきれいな曲線を形づくっていることがわかります。光琳は、ただ燕子花を気の向くままに描いたわけではなく、きちんと計算して配置していってこの屏風は作られているんですね。
これだけ大きな屏風が入る部屋って、どれくらいの広さ? これだけ派手な屏風が置かれた部屋って、どんな雰囲気? と、屏風が実際に使われていたときのことを想像しながら鑑賞すると、より作品を楽しめるはず。そして、この屏風が公開される時期、後述する庭園の池にも燕子花が満開なので、庭園散策もぜひお楽しみください!