程良く近未来を感じさせるデザイン
このところよく話題にのぼる「21世紀スタイル」の腕時計といえば、常識破りの変化球も少なくない。メカとデザインに凝りすぎるあまり、時計であって時計でないというような印象さえ受けるものがある。その点クストスのベクトルは、アバンギャルドへと逸れていくのではなくて、完成度の高いインダストリアル・デザインがそうであるように、モダンな中に一歩先の未来スタイルへと向けられている。彼らが作るコンプリケ-ションがハイテク感を際立たせながらも、あくまでも収まりの良いデザインに仕上げられているのはそのためだろう。先端的なデザインで、他とは違う複雑系時計を探してるが、奇抜すぎるのは敬遠したいという愛好家の嗜好にもマッチするはずだ。
クストス「チャレンジ-R50 QP-S」。QPはフランス語のパーペチュアルカレンダーの略。自動巻き、ステンレススティール・ケース(直径50mm)、ラバー・ストラップ。367万5000円 |
主要な複雑時計としては、先にあげたクロノグラフ、それから「ツインタイム」と呼ばれるデュアルタイム、そして今年の新作コレクションに加わるパーペチュアルカレンダーの「チャレンジ-R50 QP-S」などがある。パーペチュアルカレンダー(永久カレンダー)は、一般的には西暦2100年まで人為的な修正を加えずとも、時計が自動的にカレンダーを切り換え正確に表示する高度な複雑機構。クラシック・スタイルのモデルが多いが、クストスの場合はそれが未来志向のスポーティなデザインと融合している。
この「チャレンジ-R50 QP-S」の場合も、文字盤はサファイアクリスタルのシースルー。他のモデルと同様に複雑機構の精巧な仕組みが見え、メカ好きの好奇心を刺激する。永久カレンダーは、機械式時計の伝統に根差す、きわめて古典的なコンプリケ-ションであるにもかかわらず、むきだしのメカニズムといい、ブラックとレッドの色彩といい、外観の印象は先端機器にセットされた計器を思わせる。クロノグラフのように、なにかスピード感さえ漂っているから不思議だ。そう感じるとすれば、クストスの巧妙なマジックにかかった証拠。ともあれ、次はどんな腕時計に挑戦するのか注目を浴びる、期待の新進ブランドであるのはまちがいない。
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