緻密なコンセプトに基づく先進のスタイル

2005年のこと。スイス時計展示会の取材のためにジュネーブを訪れると、街のあちこちで“CVSTOS”という新ブランドの広告ポスターが目についた。ダイナミックなケース、透明な文字盤の下に見える黒ずくめの精悍なムーブメント、ある意味最もトレンディなそのデザインはインパクトにあふれ、強く印象に残った。実際に実物を手にして子細に見ると、細部まで非常に凝った造りの腕時計であることがわかった。

クストス「チャレンジ-R50クロノグラフ」
クストス「チャレンジ-R50クロノグラフ」。Rはラウンド・ケース、続く数字は直径50mmの意味。自動巻き、レッドゴールド・ケース、ラバー・ストラップ。504万円

クストスは、サスーンシルマケスとアントニオ・テラノヴァという二人の若い才人が中心になって創設された新ブランドである。現在の機械式時計は、ありふれた言葉でいえば「伝統と革新」という二つの複合したテーマに取り組みながら、そこからいかに「新しさ」を創造していくかが腕の見せ所になっているが、クストスの場合、その計算がじつに緻密になされている。何よりまずコンセプトがはっきりしている。指針が定まっていれば、時計づくりもおのずと明快になる。それは、ラテン語で「タイムキーパー」を意味するブランド名の「クストス」や、モデル名に用いられている「チャレンジ」という言葉に如実に表れている。「タイムキーパー」は時計を正確に司る時計そのものを指すし、彼らの作る時計はどれもが新しい挑戦なのだと。

サスーン・シルマケス
クストスの創設者の一人、サスーン・シルマケス。腕に着けているのは代表作の「チャレンジ・クロノグラフ」
クストスは、性能、効率、優雅、貴重という4つの基本的な価値観を標榜する。それはメカニズムやデザインはもとより、素材の選択、製造工程や仕上げの全般に及んでいる。実例を挙げると、最新作の「チャレンジ-R50クロノグラフ」は、サファイアクリスタルのシースルー文字盤にスモールセコンド、クロノグラフの積算計、パワーリザーブ表示などの各表示が並び、そのさらに下にはそれらを動かす機構やムーブメントが見え、高性能マシンというイメージを伝える。自動巻きムーブメントの回転ローターは比重の異なるチタンとパラジウムを組み合わせ、巻き上げ効率を非常に高めている。

写真のモデルはレッドゴールド・ケースのものだが、淀みのない流麗なスタイリングと効果的に用いられた貴金属素材が優雅にして貴重というスタイルを完成させている。若い世代のクリエーターたちのチャレンジにしては、時計をすべて熟知する辣腕ぶりさえ感じさせる。

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