あえて寡黙な超絶コンプリケ-ション
パテック フィリップは、シンプルの極致といえる「カラトラバ」からコンプリケ-ションまで、レパートリーがじつに幅広い。後者の代表として今年発表されたのが「グランドコンプリケ-ション Ref.5207」。価格はオーダー時点での時価、ジュネーブのパテック フィリップ直営ブティックでのみの販売となるスペシャルピースである。「グランドコンプリケ-ション Ref.5207」。手巻き、トゥールビヨン、ミニッツリピーター、瞬時切り換えパーペチュアルカレンダー、ムーンフェイズ機構付き。プラチナ・ケース(直径41mm)。時価 |
写真を見ていただくとわかるように、デザインはあっさりと仕上げられ、それほど凄味を感じさせるわけではないが、トゥールビヨン(重力の影響で生じる誤差を補正する機構)、ミニッツリピーター(時刻を音で告げる機構)、パーペチュアルカレンダー(月の大小や閏年を時計が自動修正してカレンダーを正確に表示する機構)という伝統的な機械式時計の「三大コンプリケ-ション」と呼ばれる複雑機構がすべて組み込まれていると聞けば、驚きの声を上げるだろう。
ふつうなら、文字盤に大きな穴を開けてトゥールビヨンを露出させ、永久カレンダーのダイヤルを所狭しと並べるなどして複雑さを強調し、技術を誇らしくアピールするところだが、ここにはそうした演出は見受けられない。文字盤に小さくTourbillon書いてあるので、ああそうかと気づく程度。文字盤上部の3つの窓に表示される日付・曜日・12か月名も、文字盤右下の小さな閏年周期の表示を見逃したら永久カレンダーとは思わないはずだ。しかも、この3つは午前零時をもって瞬時に切り替わるパテック フィリップの革新的な方式なのだが、それも実際に目にしなければ凄さが実感できない。ミニッツリピーターについては、ケース左のスライドボタンによって見分けが付く。
キャリバーR TO 27 PS QIは、直径32mmのコンパクトなサイズに三大コンプリケ-ションを搭載。総部品数は548個 |
まだまだ注目の新作が目白押し。詳しくは次ページで