ムーンフェイズとは?月の満ち欠けとカレンダーの関係
■ムーンフェイズは太陰暦を示す普通、時計の文字盤に針で示される時刻は『平均太陽時』といって、1日を人為的に24等分した時間である。一方のムーンフェイズは、新月の朔(さく・ついたち)から新月、あるいは満月の望(ぼう・もち)から満月という『朔望月(さくぼうげつ)』を表す。つまり太陰暦である。ムーンフェイズがカレンダー表示とよく組み合わせられるのも、暦としての役割にある。
ムーンフェイズのフェイズとは『相(そう)』、地球から見たときの形を指す。地球を回る月の位置と、月に当たる太陽光によって、この相に変化が生じる。日本語に三日月や十五夜といった言葉があるように、新月から数えて3日あたりに弓形の相、15日あたりに満月の相になる。
この私たちが見ている月の形を『月相(げっそう)=ムーンフェイズ』と呼び、新月から次の新月までの間の何日目の月であるかは『月齢(げつれい)=ムーンエイジ』と呼びます。
時計で使われているムーンフェイズは、月の満ち欠けする形を知る、月相を知ることができる機能です。
■カレンダーの起源は月にあり
1か月はおよそ30日、1年は12か月である。なぜそうなのだろうか。その答えを解く鍵は月にある。月の満ち欠けの周期は約29.5日。これが12回繰り返されると、同じ季節が巡ってきて、1年になるというわけだ。
もちろん、これでは日数を合算しても1年が365日に満たないが、さまざまな方法を考案して便宜的に調整してきた。また、1日の昼の時間と夜の時間を12という数で分割した理由も、この月の周期と関係していたという。ここでは詳しく述べるスペースがないが、暦の起源に関心がある方は、ぜひ専門書をひもといてもらいたい。
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■ムーンフェイズの歴史
月は、潮汐をはじめ、自然現象や動物の行動や生理現象との結びつきが観察され、古くから人間の生活に深く根を下ろしていた。中世ヨーロッパに機械式時計が登場して以来、時計にムーンフェイズ表示がしばしば加えられてきたのもそのためだろう。
懐中時計の時代になると、文字盤に設けられた窓に月の姿が現れたり隠れたりする表示機構が確立する。ブレゲが18世紀後半に作った時計には、現在と同じ仕組みのムーンフェイズがすでに用いられている。
腕時計のムーンフェイズの仕組みと見方
■回転ディスクを利用する巧妙なシステムムーンフェイズの表示の仕組みは、なかなかよくできている。伝統的に用いられてきた最もポピュラーなムーンフェイズはこうなっている。
窓の下に置かれているのは、夜空を表すブルーの地に、金色の月を2個描いた回転ディスクである。窓の形にも特徴がある。この月を覆うように、開口部に二つの半円の覆いが隆起している。
回転ディスクの月が水平の位置にあるときは、窓の半円に月が完全に隠され、新月となる。ディスクが時計まわりに回転していくにつれて、月の姿が徐々に大きくなり、90度回転したところで満月に達する。あとは再び覆い隠される部分が増えて新月に戻る。
■ムーンフェイズの可能にするのは、回転ディスクと歯車
これを歯車で行うには、まず周期を29.5日と定めて端数は無視し、ディスクに29.5日の倍数の59日で1回転する歯車をセットする。これを1日で1歯ずつ進める仕組みだ。0.5歯という半端な歯が使えないからである。そのため月がディスク上に2個必要になる。
あらかじめ倍の表示を用意しておき、実際はその半分だけが見えるようにしてムーンフェイズの1周期を実現しているのである。最初に考案した時計師の知恵に感服する。
■ムーンフェイズ表示のある最近の時計 端数を切り捨てた29.5日周期のムーンフェイズは、数年で1日分の表示誤差が生じるので、月齢表などを参考に修正の必要がある。より精巧な複雑時計になると、100年以上、あるいは数100年で1日の表示誤差しか生じないムーンフェイズもある。また、これまで紹介したのと異なる仕方でムーンフェイズをよりリアルにビジュアル化したモデルも最近登場している。
マーティン・ブラウンの『セレヌ』。月の表面まで精巧に描き、黒いディスクが月を覆って表現される満ち欠けの様子もリアル。122.5年で1日の表示誤差という精度にも注目。自動巻き。18Kローズゴールド・ケース。
【ムーンフェイズ付きの時計】
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