H.モーザーの魅力2
機械式時計の将来を見据えた設計

H.モーザーは、複雑な機構で技術を誇示したり、新奇なデザインで人目を引きつけるような、いわば『演出型』の時計づくりとは無縁だ。主眼に置かれているのは、あくまで機械式時計にとって重要な、高精度の実現である。ムーブメントの設計に関しても、伝統技術の延長に留まることはなく、それを超える新システムの開発に力を注いでいるところが興味深い。先に挙げたダブル・ヘアスプリングは、言うまでもなくその一例である。
H.モーザー「マユ・パラジウム」
スモールセコンド付き中2針のごくシンプルな『マユ』。希少な貴金属パラジウムによるケース、手巻き、176万4000円


■精度の安定維持のための工夫 モジュール化による交換システム
機械式時計にとって、もう一つ重要なのが、長期にわたる精度の安定維持。H.モーザーには、そのための卓抜な工夫がある。時計の心臓部にあたる脱進・調速装置一式をモジュール化し、この部分だけを交換できるようにしたのである。ロックレバーがモジュールに組み込まれているため、香箱の主ゼンマイが完全に巻き上げられた状態でも取り外しができ、しかも時計が制御不能になることもない。今までなら考えられなかった方式だ。

全モデルに採用されているこのモジュール化による交換システムのおかげで、メンテナンスの際の取り扱いが非常に容易になった。H.モーザーの機械式時計は、将来長く使うことを想定し、メンテナンスの問題を最初から視野に入れた独特の設計になっているのである。

次は『モーザー・パーペチュアル1』についてです。