見晴らし良好、走りはしっかりとBMW
新開発の3リッターエンジンは、バルブトロニック(無段階可変バルブ制御システム)を備えた直6直噴にツインスクロールターボを組み合わせた。燃費は同レベルのセダン(540i)より約23%優れた10・15モード9.4km/lとなる。またブレーキング時などに動力エネルギーをバッテリーに溜めるブレーキ回生システムも備える |
街中での取り回しが意外とオッケー、と書いたが、ちょっとだけ気になる点もあった。それは、低速域でのエンジンのぼろぼろ音と、ステアリングホイールに伝わるわなわなフィール。高級車にしては少し興ざめ。
速度を上げると、素晴らしい。特に高速道路は絶品。着座位置がそこそこ高いため、見晴らし良好と安定感の両立を図れた。これは、大きい。視線の高さは、街中はもちろん、高速巡航中にも大変ありがたいものだ。
高速道路は決して真っすぐな道ではない。ほとんどがいくばくか曲がっている。だから、BMWに乗ると楽しい。曲がっている最中の、ステアリングホイールを握る手への“手応え”が、他のクルマとは違う。シャシーのくいつき、車体の重量バランス、パワートレインのスムースさ、あたりの共同作業がBMWらしさを生んでいるのだと思う。
こんな格好(正直、ちょっとまだ馴染めない。7シリーズのエッセンスはあるのだけれど……)をしているけれども、走りはちゃんとBMWである。そこがこのクルマの魅力でもあり、解釈を困難にしている要因だろう。BMWとしては、これで新しいユーザーを獲得できれば嬉しい、ということなのだろうが……。走りのBMWというメッセージが伝えづらいカタチだけに、ユーザーの反応が興味深い。
後席にもじっくり乗る機会があった。疲れていたせいもあるが、動き出して5分後には熟睡していた。いい空間であることには違いない。サルーン系の後席よりも断然いいと思うのは、座っている姿勢が、深々と腰を落ち着けるタイプではなく、割と自然な格好だからだと思う。足を組んでリラックスもできる。
前も後も両方堪能できるクルマゆえ、そういう使い方をする実在のユーザーが、日本ではあまり見えてこない。そこが問題だなあ。
エンジンレスポンスやシフトタイミング、パワステのアシスト量などの設定を好みに合わせて設定出来るダイナミック・ドライビング・コントロールを備える。ダンパーのセッティングが選べるシャシー・コントロール・システム、アダプティブ・ドライブもオプションで設定される |